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29.練乳 こうざきさん



白い花がいくつも並ぶガラスの器がふたつ。
その中に、真っ赤に映える粒がいくつも転がっている。
爽子が器を静かにテーブルに置くと、翔太が子どものように目を輝かせた。
「いちご!」
爽子はティーポットから紅茶を注ぎながら翔太の反応を伺う。
「いちご好き?」
「うん、ちょー好きっ」
すっぱいのは嫌だけど、と付け足して、ティーカップを受け取る。
爽子がきちんと座るのを待ってから、湯気の立つカップに2度息を吹きかけ口をつけた。

「うちは、あんまこういうの出ないんだよ」
まるで自分の存在を主張しているかのような赤。
フォークを刺すと、その瑞々しさが伝わってくるようだ。
「そうなの?」
「いちごって高いくせに量無いじゃん」
「そうかも…」
「食べ盛りがふたりもいるからってさ、中々買ってくんないの」
翔太が自分を指差し、そして、まるでそこにもう一人いるかのように隣を指差す。
彼の弟の事を言っているのだろう。
爽子は、兄弟がふたり並んで食事をする姿を想像した。
なんだか、おもしろいような、微笑ましいような。
そんな気持ちが爽子の胸をぽっとあたためる。
「お、これ甘いよ」
大きめの粒を、いとも簡単に口の中に放り込む。
どうやら"当たり"のようだ。

翔太に続き、爽子がひとつめのいちごを頬張ろうとフォークを刺すと
コンコンとドアをノックする音が部屋に響いた。
同時に、のんびりした声が爽子の名前を呼ぶ。
「爽子っ、これ持って行かなかったでしょお」
「あっ!忘れてた…ありがとうお母さん」
爽子がドアを開けると、いつものように機嫌の良さそうな顔がひょっこり覘く。
翔太の心臓が僅かに跳ねた。
何も言わずに頭だけ丁寧に下げると、それを見つけた爽子の母は
やはり機嫌の良さそうな顔で手を振り応えるのだった。

階段を降りていく音が遠ざかって、翔太はほっと胸を撫で下ろす。
爽子の両親はとても良い人だけれど、顔を合わせるのに慣れる日が来るのはまだ先の様だ。

改めて座り直した爽子の手に、何か握られているのを見つける。
爽子の母が先ほど渡しにきたものだ。
「風早くん、これ使う…?」
「ん、それ何?」
爽子が目の前に差し出したそれを、翔太は不思議そうに覗き込んだ。

白と赤のチューブ。
中途半端にリアルで中途半端に漫画チックな、よく分からないけれど愛らしい牛のイラスト。
そして全体の雰囲気に合っているんだか合っていないんだか、これまたよく分からないフォント。
スーパーでよく見かける、あれだった。
「あー、練乳」

真っ赤ないちごに、真っ白な線がデコレーションされていく。
爽子ははじめのひとつをそのまま食べると、あとは全てに練乳をかけた。
ガラスの器につうと練乳が垂れ落ちる。
白の加わったいちごが口に運ばれて行くのを、翔太はじっと見つめた。
その眉がなんとなく歪んでいるのは、気のせいでは無い。
爽子が食べ終わるのを待ち、喉が動くのを見送ってから、翔太は聞いた。
「美味しい?」
「え?美味しいよ?」
「いつもかけんの?」
「うーん…その時によるけど…」
答えを聞き、爽子の器に目を向けてから、翔太は更に眉を歪めた。
爽子が首をかしげ、質問し返す。
「そ、そんなに嫌?」
「ていうか…食べようと思った事が無いかも…」

目の前にチューブごと置かれているそれを、翔太は食べた事が無い。
牛乳と砂糖のかたまりだと思うと考えただけで喉が渇くし
わずかに香る独特の匂いをかぐと、どうも美味しそうだとは感じられない。
食べろと言われれば食べていたかもしれないが、如何せん翔太の周りにはそれを勧める者が居なかった。
たまに食卓に上るいちごはそのまま食べているし、カキ氷もシロップのみだ。
「あ、じゃ、じゃあ一個だけかけてみたらどうかなっ」
爽子が、妙案だとでも言うように人差し指を立てる。
至極単純なことを、瞳をキラキラさせて告げる爽子が可愛らしい。
食わず嫌いな訳でも無いし、と素直にその提案に乗るべく翔太はチューブに手を伸ばした。
気に入らなければ、他はそのまま食べれば済む話だ。

翔太がひとつだけに練乳をかけ、さあ食べようとフォークを握ると
爽子がティッシュで口元を押さえるのが視界に入った。
プスリ。綺麗にフォークが刺さる。
始めに食べたものと同じように瑞々しさがよく伝わる。
あとは口に運べばオーケーだ。
だが、翔太はふと考え事をするようにいちごを見つめ、そのまま視線を上に向けると
今度は爽子の目の前へといちごを差し出した。
突然の事に、勿論爽子は戸惑いながら差し出されたいちごを見つめる。

「…黒沼、あーん」
練乳がゆっくりと流れ、爽子の器に落ちた。
「…えっ、えええええ!?」

「ほら、せっかくかけたのに落ちちゃう」
急かすように、翔太はいちごを爽子の口元へ近付ける。
風早くんが食べる話をしてたはずじゃあ…。
意味の分からない展開にそんな風に考えていると、いよいよ数ミリの所にまで迫った。
言われるがままにいちごを頬張る。
甘くて、美味しい。
「美味しい?」
疑問を浮かべたままに、爽子は口を動かしながら頷いた。
喉に流して、唇に僅かについた練乳を拭おうと、先程と同じようにティッシュに手を伸ばす。
「あ、ストップ」
が、その手を翔太が制止した。
「な、なぁに?」
今度はなんだろうと、疑問いっぱいの声で爽子が翔太を見る。
テーブルを挟んだ向かい側にいる彼が、ぐいと爽子に近づいた。


「…っん!」
翔太の唇が、軽く食むように爽子の唇を包む。
爽子は突然の事に目を瞑る事も出来ずにいた。
目の前には彼の瞼が広がる。
触れ慣れた感覚に、心地よく心臓が高鳴る。
やっと爽子が目を閉じた頃には、その唇に熱い舌が這っていた。
唇を舐め、僅かに開いた瞬間を見逃さず徐々に中をも探って行く。
どれくらい触れ合ってていただろうか。
最後に軽く音を立て、翔太の唇が爽子から離れていく。
ゆっくりと瞼がひらき、ふたりの視線が絡み合った。
「…甘いね、凄く」

爽子の細い両肩を掴んだまま、翔太は幼い顔で笑った。
いちごを見た時よりもずっと幼く、ずっと輝いた顔で。






チャット時に企画への参加を強引に頼んでみたら…
みたら!
人間言ってみるもんですねWw心お優しいこうざきさんは(きっと私の発言に呆れつつも)
参加してくださいましたぁぁぁぁ(感涙)
ありがとうございます!
しかも練 乳Wwww
練乳でチュウなんてWw
おいしすぎる!
っていうか練乳たらせる爽子ちゃんを想像して鼻血ふきそうでしたWWww
むはーーーーWwwww
本当にありがとうございますーーWw

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