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3. 苺(苺狩り) はる

チャイムが鳴りだし、お昼休みの時間。
その合図が鳴ってみんなあちこちに散らばる。
ある奴は外へ。
ある奴は学食へ。
ある奴は購買へ。
そして俺は…
「は、はい!風早くん!!」
「わっ!今日も作ってくれたんだ!サンキュー黒沼っ」
黒沼から受け取る藍色の風呂敷に包まれた弁当箱。
黒沼と付き合って、俺が毎日学食で昼食を賄っているのを知り、殆ど毎日と言って良い程黒沼は弁当を作ってきてくれる。
「龍は?」
傍にいる龍に尋ねると机の上に大きなおにぎりを出してきた。「おにぎり…」
「そっか!!じゃー一緒食べるかっ」
それから矢野や吉田もきてみんなで周辺の机を適当に重ねる。
そうして5人で昼食を共にするのはもう何度目だろうか。

「今日のご飯は何かな~」
ワクワクしながら風呂敷を広げる。弁当箱の蓋を開けるまでがホント楽しみだったりする。
だって 黒沼の作るご飯とか食べ物って冗談抜きに美味しいんだもんっ!!
風呂敷を開けるとそこにはいつもの如く二段重ねの弁当箱と、あと…
「?」
小さな正方形のタッパー。
それが何か分からなくて首を傾げると、黒沼の方にも色違いの同じタッパーがあったのをみた。
「あ、それは…オマケです」
タッパーを不思議に見る俺に気づいて黒沼がそう付け足す。
「オマケ?」
「しょ、食後のデザートなのっ」
「デザートまで!?うわーなんだろ。すげー楽しみっ」
「え~風早だけデザートってずるい~っ」
「た!沢山あるから後でみんなで食べようねっ」
「やりっ!」
「ちづ…あんたって」
ガキみたいな事言ってた吉田もウキウキしながら、
俺はタッパーは後の楽しみに取っておく事にして先に弁当箱を開けた。
「いっただきまーす!」
今日もうまそうなご飯に自然と口元が緩む。
見た目も拘っている色鮮やかな弁当。
口に運ぶだけで幸せを一つまた一つと噛み締めてる感じがする。
「あーあ。あの緩みきった表情…」
「はー。見てらんないねっ」
「しょーた…だらけすぎ」
「あーはいはい。何とでも言えっ」
「うっわ。いつもなら言い返してくるのにっ!」
そう。いつもの俺なら直ぐ反感を買うんだけど今は違う。
黒沼の弁当によって生まれる世界は一種のサンクチュアリみたいなものだ。
だから、今幸せいっぱいな俺に何を言っても通じない。
米粒一粒ですら愛おしくって、口に放り込むと弁当は減るけど胃袋やら色んなものが満たされてく。
「はーうまかった!!ごちそうさまでした、黒沼っ!」
「お、お粗末様でしたっ」
「ははは。ホント、今日もおいしかった!…っと。まだあったんだったな」
蓋をした弁当箱の端に置いていた正方形のタッパーに再び目がいく。
どうやら黒沼はまだご飯を食べてる様で、俺は一足先に食べる事にした。
「先に食べていい?」
「うん!どうぞっ」
密封されたタッパーの端から開けてくと、そこには容器いっぱいに入れられた赤い実の数々。
「苺だ!」
綺麗な色に熟されてて、痛んだ箇所も見当たらない赤い宝石。
鼻につく香りも実ってますよっていう合図みたいだった。
「いいの?苺ももらっちゃって」
「うん。近所の人から頂いたので…まだ沢山家にあるの。だから是非」
「ありがとう!じゃぁ遠慮なく頂くよ!ん、龍も」
「あぁ…ありがと黒沼」
「う、ううん!!どう致しましてっ」
黒沼の名前をすっかり間違えなくなった龍。
そのお礼に黒沼は喜んでて。
苺に刺された爪楊枝みたいなカラフルなプラスチックの棒で、俺は苺を口に運んだ。
甘くて、酸っぱ過ぎない、程よい苺の味が口いっぱいに広がった。
「うまい!」
「…うん、うまい。苺って今が旬なのな。」
「だな!あんま意識したことないけど」
龍もこの味に納得の様子だった。
「龍もずるいっ!」
賺さず吉田が叫んで、その横にいる龍は棒で苺を差した。
「ん。」
「わーい!」
そして吉田の前にやると、喜びながら餌付けされる姿をみて俺は吹出しそうになる。
「龍って普通にそーいうカップルっぽいことできたんだ。意外」
関心しながら、また驚きながら矢野はその場面を見て漏らした。
まぁ確かに。
同性ならまだしも異性に何かを食べさせるって…なんか恋人同士っぽい。
龍はそういうのすんなりとやってしまう様に見えるけどいざその光景を見てしまうと驚きのが大きいな。
「俺も矢野に同意かも。意外だよなー」
「…そう?」
「でも私がゲームに集中して手が離せないとき龍に食べさせてもらうよ」
「あぁ。なんかそれ納得いくわ」
矢野の言葉に、ゲームで苦戦する吉田にポテチとかを食べさせる龍の姿が頭に浮かんだ。
確かに…納得いく。

いつからか矢野や吉田も黒沼のタッパーから苺を貰っていて、みんなでその果実を頬張っていると…
「あ」
なんだか歪な苺を見つけた。
不思議な形で、思わず手で摘んでみると、
「コレ…ハートみたいだ」
「はっ!き、気付いた?」
「え?気付いたって?」
摘まれたソレは逆三角形な苺の形じゃなくて、自然にできるものだからこそ特殊な形をしていた。
下にある角が2つあって、ヘタがある側を下に向けるとハートの形みたいなのだ。
「実は苺を切っているときにその形に気づいて…。切るのが勿体無いから風早くんの方のタッパーに切らずに入れたの」
たしかに、他の苺はヘタは取られて食べやすい様2等分されているけどこの苺だけは洗われただけの素のままの状態だ。
「そのハート…普段私気持ちを伝えるのが苦手なので。
ハートの形をした苺が届けてくれればいいな、と思いまして」照れながら、もじもじする黒沼。
な、なんて可愛いんだろっ!
今すぐにでも抱きしめたくて体が疼いてしまうっ



「ねえ…なーにこの空気」
「なんか甘ったるいね…」

目を細めながら俺たちを見る外野からの声。
だけれどもどうだっていいそんなこと。

「でも…なんかこの苺勿体無いから黒沼が食べてよ」
プラスチックの棒にさして、彼女の口にやる。
「え!?いや私はまだ沢山あるからっ。風早くんどうぞっ」
「んー。やっぱ食べるのが勿体無いし…」
「でも…それ、私の気持ちとして入れたのだけれども…やっぱり苺に気持ちを注入するのって駄目だったかなあ」
忽ち悄げる黒沼。

―――――う"っ!!!

まるで子犬が捨てられた時に見せる儚さの様な、けれどもそこには子犬独特の哀愁が漂ってて…か、可愛い!

俺コレに弱いんだよ…

「く、黒沼の…気持ち…」
口にして、実感が湧きだしたのか顔が下から熱くなる。
「う、うんっ。だから…食べて?」

―――――ズキュンッ!!!

胸に大きな矢が刺さって貫いた様な感覚。
上目使いで、変わらずの潤んだ瞳…しかもその殺人級にやばい台詞!!!
も、もう駄目だー!!!

俺食べるっ!食べるよ!
黒沼の気持ち毎!!!

てか黒沼毎食べちゃいた―――――“ぱくっ”






… 『ぱくっ』?



様々な興奮の渦に包まれてたからか、今一ピンと来なかったその効果音…
俺は我に帰って手元をみた。

「…え?」

そこにはプラスチックの棒、のみ。
先には何も刺さってはいない。
つまりは先ほど迄何かが刺さっていたわけで…
「…あ」
黒沼の声で、その視線の先をみた瞬間、何だかもう一気に色んなものが消滅していって泣きそうだった。
そこには
「ん?なんだしょーた」
何も悪びれた様子もなく、モグモグと口を動かす一応このクラスの担任、ピンの姿。
「うめーなこの苺!もっ個くれ」
「あ…ど、どぞっ」
しかも黒沼のもつタッパーから更なる苺を取ろうとしてて…

“ガタッ!!”
「吐け!吐けピン!返せ俺の苺ー!!!」
勢い良く机から立ち上がって、ピンに突っかかった。
「は!?なんだいきなりっ!てか苺ならまだお前んとこにもあるじゃねーか」
そうだけど…
そうだけどっ!!!
違うんだ!!
あの苺じゃなきゃ…
あの苺じゃなきゃ~~~~!!!!!
「吐けー!!!!!」
俺は嘆く様に叫んだ。
てか実際泣きたい気分だっ!!



「二頭追う者は一頭も獲ずってこの事を言うのね」
そんな矢野の皮肉な声がする。
苺と黒沼をって欲張ったから!?
だからって…

あんまりだろーっ …




20100225

甘く…甘く…
途中頑張ったんだが。
結局はこんなオチで(爆)

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