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特別(一花さま)

散歩道 一花さまより執筆。
2月13日の続編。


黒沼から、念願の、本当に念願の、バレンタインのチョコレートをもらった。

俺はそりゃあもう、そりゃあもう!嬉しくて。
嬉しくて嬉しくて!
空でも飛べそうな気持ちで帰路についた。

黒沼の手作りなんだから、絶対美味しいに決まってる。
そう言えば一年の時にもらったクッキーもすっげぇうまかったし!

ってゆーか、例え美味しくないとしても(そんなことは有り得ないけど!)、他で
もない黒沼の本命チョコを、俺の胃の腑に納めていいんだ、と思うと、もう。
もうっ!他のことどーでもいいくらい胸が高鳴るんだ。

「たっだいま~!」

早速食べちゃおっかな。
いやでも、勿体ないかな。

おっと。
外寒かったし、トイレに行きたくなってきた。
我慢出来ないほどじゃ全然ないけど、とりあえずトイレ行って、それからゆっくりチョコ開けよう。
そうしよう、うん。

「しょーた!おかえり!」
「おー透太!」

ちょーっとぐらいならこいつに分けてやってもいいな。
ほんとにちょっとだけなら!

俺は透太にリビングまで鞄を運ばせ、自分はさっさとトイレへ向かった。
あまりの美味さに、あいつもびっくりするだろーなー!


トイレから出て、念入りに手を洗う。
早く食べたい気持ちと、ずっと取っておきたい気持ちが入り乱れてる。

わくわくしながらリビングに向かう。


向かう、と――……

「しょーたー!これすっげーうまかった!もうねぇの!?」

透太は俺の腰に纏わり付いてきた。

は……?え…………何?
何でこいつは口の周りにチョコ付けてんの?

何で、俺の鞄開いてんの?

で、何で俺の鞄の周りに、黒沼からもらったチョコレートの包みが散らばってん
の?

「……しょーた?」


何で、なんて、答えはひとつしかない。

「~~~~っ!」

ごちん、とすごい音がした。
そりゃそうか。今までこんな力で透太を殴ったことなんかない。

そう、気がついたら俺は弟を殴っていて――

「っぎゃああああん!」

透太は火が付いたように泣き出した。

「しょーたが殴ったあああー!!」

その声を聞いて、買物に出るための身支度をしていたらしい母さんが、リビング
に飛び込んで来た。

「翔太!?何してるの一体!」
「かーちゃあああん!」

母親の登場に、弟は甘えるように抱き着きに行く。

「何考えてるの!?弟を殴るなんてっ」

~~~~っ俺、悪くない!絶対絶対悪くない!
何してるの、はこっちのセリフだ!!

むぅっとしかめっつらの俺を見て、母さんは透太の背中をとんとん叩きながら、
リビングをぐるりと見渡した。
俺の鞄の周囲に目を留めると、何かを悟ったように母さんはため息をついた。

「……あのねぇ、翔太。そりゃあ透太も悪いかもしれないけど」
「俺絶対謝んないからなっ!」

母さんの言葉を遮るようにそう言うと、振り向かずに自分の部屋へ向かう。

あのチョコは!俺ので!
俺だけので!
開けるのも、食べるのも、誰かにそれを分けるのも、全部俺しかやっちゃいけな
かったのに!

階下からはまだ透太の泣き声が聞こえて来るけど、俺の怒りは少しも治まってい
なくて、行き場のない拳を何度も何度も枕に落とした。

と、その時、制服のポケットでブブブと何かが震えた。
何かって、ああ、携帯か。

何だよ、誰だよ、と思って取り出すと、そこには愛しの彼女の名前。

「!もしもしっ」

慌てて通話ボタンを押す。
黒沼から電話が来るなんて、ほんとにほんとに珍しい。

『あ、風早くん。きゅ、急にごめんなさい。あの、今……大丈夫、かな?』

最初に、んんっと咳ばらいをして、黒沼はおどおどと言葉を紡いだ。
うわー、すっごい緊張してる。って、それは俺もかも。

「全然大丈夫!どうしたの!?」
『えっと……あの、チョコレート、もう、食べちゃった?』

『チョコレート』その単語はすっげーずしっと俺に響いた。
食べたかったよ。食べたかったよ、黒沼。
ごめん、黒沼――……

「…………ごめん」
『え?』
「チョコ、ないんだ」
『え……?あ、もう全部食べちゃった、のかな……?』

早いね、と黒沼は笑った。
違うんだ、そうじゃなくて。

「ごめん、違うんだ。俺、弟に全部食べられちゃって」

俺のために作ってくれたのに。
『トクベツ』だって言ってくれた、のに。

「…………ごめん」

最低だ、俺……

『そ、そうなんだ。でもじゃあ、ちょうど良かったかもしれない……』

……?
ちょうどいい?
俺、こんなに落ち込んでんのに、ちょうどいいとか、なんでそんなこと言うんだよ。

「なん……っ」
『今からなんだけど、ちょ、ちょっとだけ、会えない……かな……?』

なんで、と声を荒げそうになった俺は、それを遮った黒沼の言葉にぴたりと止まる。

え、今からって、今からって……デ、デート?
いや、黒沼だしな、多分俺の勘違いか聞き間違いだ。

「今からって、あ、マル?」

構わないよ、と俺は続けた。期待を裏切られるのに慣れてきた俺も何だかな。

『う、ううん。もし風早くんが嫌でなければ……ふ、二人で…………』
「…………」

き、聞き間違いじゃ、ない。
勘違いじゃ、ないかも。

黒沼、それは俺を誘ってるんだよね……?

『風早くん?』
「いっ、行く!大丈夫!どこ!?」

ちょっと落ち着け、俺。

長く息を吸って、そしてまた長く吐き出した。
それから待ち合わせ場所を決めた後、俺は慌てて制服を着替える。

チョコはなくなってしまったけど、今日黒沼に会えるならいいかな、とか思って
る俺は単純だと思う。(透太のことはまだ許さねーけど!)

そー言えば、今日は黒沼、やたらに慌てて帰って行ったよなぁ。
せっかくのバレンタインなんだし、放課後デートとか期待してたんだけど。


俺は「ちょっと出掛けてくる」と告げると、意気揚々と家を後にした。
ぴゅうっと北風が絡んできて、剥き出しの手をポケットに突っ込む。
手袋、買わなきゃかな。
いやでも、ホワイトデーがあるし、無駄なお金使ってる場合じゃないよなー……


「くーろぬまっ」

待ち合わせをした河原に着いて、どこかぼーっとした様子の黒沼に、後ろから声
をかけた。

「わ、わあっ!?」

黒沼は、飛び上がるように驚いてから、頬を赤らめて、えへへ、と笑う。
あー、本当可愛いなー。

「どしたの?今日、急いで帰ってたのに」
「あ、うん。あのね、それはね」

黒沼は喋りながらごそごそと鞄を探ると、何か小さな包みを取り出した。

「本当はチョコレートと一緒に渡したかったんだけど、チョコレートの方に時間
がかかっちゃって、出来上がらなかったの」

受け取ってくれる?と言いながら、黒沼は俺に何かを差し出した。
何だろう、と思いながら受け取ると、中身はふわふわと柔らかいもののようだっ
た。

「あのね、出来れば今日渡したくて、慌てて完成させたの……!」
「あ、開けていい?」

黒沼の緊張が伝わってきて、ドキドキしながら包みを開く。
すると、そこには五本指に別れた、綺麗な模様の毛糸の手袋が入っていた。

「――黒沼、これ……」

俺に――?

「あの、やっぱりチョコだけじゃなくて、何かしたくて……!風早くん、たまに
手が寒そうだったから…………っ!」

迷惑だったかな、とか、勝手に作ってしまって、とか、黒沼は恥ずかしそうに手
で顔を隠してしまう。
俺はその手袋を両手にはめると、顔を隠す黒沼の手を握った。

「か、風早く……」
「あったかいよ、ありがと……」

ちょうどいいって、このことだったんだろうな、多分。

「黒沼、チョコがなくなっちゃったからさ。……ちょうだい?もういっこ」
「え……」

俺は、突き上がる衝動に逆らうことなく、黒沼の手を握ったまま、一歩、二歩と
黒沼に歩み寄る。
不思議そうに見上げるその顔に、自分の顔を近づけて、そのまま――……

「あっ!」
「…………え?」

黒沼の唇まであと10cm程というところで、その大きな声にぎょっとする。

「チョコだよねっ、ちょっと待ってね!」

黒沼はそう言うと、俺から手を離してまた鞄を探る。

「……あった!特別ではなくて、みんなにあげたのと同じものなんだけど」

少し余ったので、と黒沼はニコニコと俺にチョコレートを差し出した。


いや、えっと……嬉しいんだけど。嬉しいんだけど……っ!
何だろう、この脱力感。

「……ありがと」

俺ちょっとバカみたい、とか思いながら、手渡されるチョコレートを笑顔で受け
取る。
来年は弟さんの分も作るね、と黒沼ははにかんだ。

「えっ、いいよいいよ!迷惑だろ?」

そう言った俺に帰ってきたのは、極上スマイルとパンチ力の凄まじいセリフ。

「やっぱり風早くんに食べてほしいから、だから、来年は作るね……!」


俺、今たぶん、世界で一番幸せかもしんない。
…………ここ数日で、二度もキスが未遂に終わったことは、考えないようにしよ
う。うん……


***


得たものもあれば得られなかったものもあるわけで・・・。
なんだかそんな風早に同情しそうになりました(笑
だってだって弟に食べられたらそりゃー嫌だよー
私なら呪ってしまうかもしれんっ。
でもやっぱり風早は単純太くんでしたね(^^
目先の幸せを求める風早・・・
そんな風早は実はすごく好きですWw
本当に爽子ちゃんしか目にはいってないんだなーってWw
なんだかいいないいなWw
ステキなお話だぁーーWw



一花さまの作品へ感想をぜひ!
コメント欄へおねがいしまーす(^^

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非公開コメント

焦れ太ですね

哀れwの一言ですが
天使のような爽子によって救われるのですね。
良かったねー風早くん爽子から特別なプレゼントがもらえて・・・!

チッス(未遂)2敗は気付かなかったことにしてあげましょうw

大人気ない風早www
一花さんの寛大な龍目線のお話と比較すると
この大人気なさが際立ちます(笑)

でも爽子から素敵アイテムもらえてよかったですね!
うらやましす。。
弟殴っといていい思いする風早なんぞ、
これから何回もチッス失敗すればいいと思います。(ひどっ)

いやでもきゅんきゅんしました!
ごちそうさまでした('∀'*)
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