FC2ブログ

チョコレート行方不明事件(きんもくせいさま)

小説を頂きましたー!
チョコレート行方不明事件



***


2月14日

(ない!ない!ないないないないないっ!!!!)

風早翔太は盛大に焦っていた。

見たこともないくらい焦っていた。

それもそのはず。

ないのだ。

大事にしまっていたアレが。


アレとはもちろん
去年、自分だけがもらえなかったチョコレート。

今年は、自分だけにくれた、
世界でたったひとつだけのチョコレート。

朝、登校するときに会って、そのときに渡してくれたのに。

「今年は・・・か、風早くんにだけなんだ・・・・」

その言葉を聞いたとき、
嬉しすぎて思わず衝動的に抱きしめたくなった。

「ありがと!!」

そんな念願叶って
ようやく手にした大事なもの。
それが今、ないのだ。

(絶対!絶対ここにしまったはずなのに!!!)

かばんに手を入れて何度もガサガサやってみたのだが、
まったく影も形も見当たらない。

(うそだろ!?)

顔面蒼白とはまさにこのこと。
絵に描いたように青くなったまま、
しばらく動けなくなった。

チラリと視線を送ったのは、
その贈り主。

黒沼爽子だった。

あやねとちづとともにいつものように笑いあってるその姿をみて、

(黒沼に失くしたなんて言えない!!)

ますます焦るのだった。

幸い今は昼休み、
風早は立ち上がるとロッカー、下駄箱
思い当たる場所に探しに行ってみる。

しかし、どこにも見当たらなかった。

青い包装紙にくるまった、
四角い箱。

その中身はいったいどんなものだったのか、
中身はまだ空けていないからわからない。

本当はもらったその場ですぐに開けて食べたいくらいだったのだが、
もったいなくて食べられず、
あえて開けずに大切にしまっておいたのに・・・。

(黒沼のことだから、絶対手作りのはず!!)

あああ~~~どうしよう~~~

風早は頭を抱えた。

が、

(落ち込んでる場合じゃねー!)

時間はない。
とにかく見つけることが先決だ。

しかし、
いくら探しても自分の行動範囲にはなにもなかった。
痕跡すらない。

あとは誰かに聞くしかなかった。
人を疑いたくはなかったが、
『黒沼のチョコレート』
という大事なものを探すのに、
なりふり構ってる場合じゃなかった。

とりあえず、
キョロキョロあたりを見渡すと、
ぴょんぴょん跳ねてるジョーを発見する。

(ん?)

よく見ると、口のまわりに茶色いものをつけていた。

「ジョー!!!」

後ろから羽交い絞めにして、ジョーを捕まえる。

「うわあああ、な、何!?風早っ!????」

そのままズルズルと教室の隅に引きずって、
爽子たちに気づかれない位置までくると、

「ジョー、お前・・・食った?」

「は?」

血相を変えてジョーに詰め寄る

「食ったかって聞いてんだよ!」

今まで見たこともないような風早の
そのあまりの勢いに、さすがのジョーもたじたじになってしまう。

「あ、う・・・うん」

答えるやいなや、

「お前なー!!!!」

風早の目が血走った。

「え?・・・風早何怒ってんの???」

何がなんだかさっぱりわからないジョーに向かって、

「だって!お前食ったんだろ?チョコレート!!!!」

知らないとは言わせない!と風早の顔が近づく

「ええっ!!なんでわかったの??」

「口のまわりに証拠が残ってる!!」

「わぁ~~~まじで~~!?」

「出せ!今すぐ出せ!」

口を無理やりあけようとする風早に
ジョーは
うわぁぁと声をあげながら、
それを阻止しようとジョーも必死に訴える。

「えええ~~!そんなの無理だってぇ~!!!・・・だってさ、風早、貞子のチョコ以外いらねーって言ってたじゃん!!」

それを瞬間、風早の動きがピタリと止まった。

しばらく固まる2人。

「・・・・・・・・・・え?」

「・・・ん?」

ジョーも、急に風早が静かになったので、
どこか拍子抜けした顔で空を仰いでいた視線を風早に戻した。

羽交い絞めにして口をあけさせようとしていた体勢を解き
風早は恐る恐るジョーに聞く。

「・・・ジョー・・・お前の食べたチョコってさ・・・」

「なんだよ~~~!平野と遠藤がみんなにって配ってたんだから別に食べたっていいだろ~~!!」

口を尖らせながらジョーは抗議の声をあげた。

「・・・平野?遠藤?」

「そうだよ!今年は俺スゲー期待してたのにさ・・・まだ、一個ももらえてねーんだよ・・・俺の唯一のチョコ吐き出せねーよ!!」

(絶対ジョーだとおもったんだけどな・・・)

あてが外れた。
風早の捜索はふりだしに戻ってしまう。

(でも、よかった・・・黒沼のチョコは食べられてなかった)

ほっとしながら、

「・・・そっか、まあ・・・頑張れ!」

風早はジョーの肩をぽんぽんとたたく。

「うわっ、なんかムカつく!!なんだよ~風早~!!」

「ごめん、悪かった。他あたる・・・」

そう言って立ち去った風早の背中を

「?????」

ジョーはポカンとした顔で見送った。


***


しばらく廊下を歩いていると、
見慣れた背中を発見する。

風早はその背中に向かって声をかけた。

「龍っ!」

「ああ、しょーたか」

振り返ったのは真田龍、
風早が一番信頼して、気心が知れてる相手だった。

龍のことだ。
見つけたチョコを勝手に食べたりなどはしないだろうが、
何か見たり聞いたりしたかもしれない。

(龍にも聞いてみるか)

「あのさ・・・」

「?」

「チョコ・・・」

いいかけた風早の言葉を聞いて

「チョコ?・・・ああ、あれか」

すぐさま反応する龍。

「えっ!龍知ってるの!?」

驚いた風早が即座に食いつくと、
龍は独り言のようにつぶやいた。

「千鶴の作ったすげー形のすげー味のやつ」

「えっ?」

「キョーレツだった」

「・・・吉田のチョコレート・・・」

思わず風早も想像してみた。
でも、まったくイメージできなかった。

「何をどうやったらあんな味になるかわかんねー」

でも、言いながらもどこかうれしそうな顔をしている龍

滅多に変わらない、龍の表情が緩む時は限られている。

(やっぱり吉田だからなんだろうな・・・)

しかし、
どうやら龍は爽子のチョコは知らないようだ。

風早はその話を聞いて、
ますます爽子のチョコが気になった。

(吉田が手作りでチョコをあげたということは、黒沼が教えたのかもしれない。っていうことは・・・やっぱり手作り・・だよな・・・。)

ますます中身が気になった。

早く探さなくては!
龍に別れを告げると、風早は足早にその場を後にした。


***

次に風早が見つけた人物。

(ほんとはあんまり聞きたくねーんだけど・・・)

一瞬ためらったが、
もしかしたら、落し物で届けられているかもしれない。

迷ってる余地はなかった。

「ピン!」

声をかけると、

「ん?なんだしょーたじゃねーか!」

振り返った人物が、
手ごろな獲物を発見したように、
ニヤリと笑った。

「あのさ、チョコ・・・」

言いかけたとたん、

「・・・あっ!お前さては自慢しにきたんだろっ!」

「は?」

まだ何も言っていないのに、
いつもながらピンは人の話を聞かない。

「てめー、一人で幸せそうな顔しやがって!!」

「なんだよいーだろ!別に」

反論すると、
よけいいじられるのだが、
ついつい、ムキになってしまう風早。

そんな反応をすればするほど、よけいに面白がるピンによって、
いつも雑用をおしつけられたり、いいように使われてしまうのだが・・・

「くそっなんかムカつく!!・・・しょーた、ちょっとこいっ!」

「わっなにすんだ!!」

「いいからこいっ!」

わかっていながら冷静になれない風早は、
案の定というべきか、
大きな身体のピンによって
ズルズルとひきづられるように、連れて行かれてしまった――


***


(・・・はぁ・・・ひどいめにあった)


それからしばらくの間、ピンの肩もみをさせられた上に、
どうでもいいような話を聞かされ、
開放された頃にはどうしようもない脱力感が風早を襲っていた。


すると、そこにやってきたのは・・・

「あっ!風早じゃ~ん」

「高橋」

隣のクラスの高橋千草だった。

「どう?貞子とあいかわらずベリ?」

「えっ??」

意味がわからず返答に困っている風早を見て、

「ふふふ」

なぜか不適に笑う千草。
今は隣のクラスになってしまったが、
1年の時一緒のクラスだったので、よく風早のクラスにも顔を出している。
時に、誰も知らないようなことを把握していたりしていることがあり、
見ていないようでいろいろ見ているあなどれない人物だった。

(高橋って結構情報詳しいよな・・・もしかしたら)

「・・・・あのさ」

言いかけたときだった。

「あっ、そういえばさー風早もうチョコもらったの?」

「え!!」

今、自分が切り出そうとしていた話題をさらりと持ち出され、
風早は驚いた声をあげた。

しかし、本当に驚くべきは次の言葉だった。

「青い包みの四角い箱」

千草の言葉に、
風早の目がまんまるく見開かれた。

「ちょ、高橋なんで知って!?っていうかどこでそれを?」

これ以上ないくらい盛大に驚く風早を見て、

「・・・ふふふ」

なぜか、満足そうに不適に笑うと、
そのまま立ち去ろうとする。

「あっ!高橋!!」

慌ててひき止めようと声をかけた風早に

「あ、いっとくけど、私じゃないからねー。・・・知りたかったら本人に聞けばわかるんじゃなーい?」

「き、聞けるか!!」

「だよねーハハハ」

そういい残して、
千草は楽しそうに軽やかな足取りで立ち去っていった。

「・・・・」

残された風早の中でなぜ高橋が知ってるんだと、
よけいにモヤモヤとしたものだけが残ってしまうことになった。


と、そこに、

「何してんの?風早」

呼ばれて振り返ると立っていたのは、

「三浦!」

両手にあふれるたくさんのチョコを抱えた
三浦健人だった。

(なんか、癪に障るけど、一応聞いてみるか・・・)

そう思って、話を切り出そうとしたときだった。

「いーよなー風早、貞子ちゃんから本命チョコもらえて。俺なんて、今年はほらこれだけだも~ん」

ホクホク顔で今にもこぼれ落ちそうなチョコの山を抱えている健人を見て、

「お前それ全部食う気?」

風早は聞かずにいられなかった。

「あったりまえじゃん!俺基本的に女の子がくれるチョコは全部もらって食べる主義、もちろんお返しも全員にするけどね☆」

博愛主義と自称する健人らしいが、

(俺は黒沼のチョコだけで十分だ)

風早はそう思った。

だが、あえて口には出さなかった。
どうも健人と話していると余裕がなくなる。
悪気はないとはいえ、
自分と爽子がつきあってるとわかっててなお、
未だ気軽に爽子に気軽に接する健人をみてるとイライラしてしまうのだ。

「俺も食いたかったな~貞子ちゃんのチョコ・・・絶対うまいぜ!!・・・あ、そうだ、なんなら俺一緒に食べてやろっか」

「絶対やらねー!!」

「ははは、冗談だって冗談!そんなマジになんなよー」

(ダメだ、やっぱり三浦に聞くのはやめよう)

「じゃあ、俺行くから」

風早はそういい残してその場から去ろうとした。
と、

「そういえば、風早そんな必死になに探してんの?まさか貞子ちゃんからもらったチョコ無くしたとかじゃないよね~?」

急に健人に言われた言葉に
ドキーッ
心臓が止まりそうになる。

「三浦・・・お前・・・」

(っていうか、なんでいきなりそんなこと言うんだ?まさか!)

風早に疑惑が浮かぶ。

「あ、言っとくけど、俺は持ってないよ。・・・でも、知りたかったら教えてやってもいいけど」

だが、まるで心の中を見透かされたような返事が返ってきた。
しかし、健人の意味深な含みを残した言い方にカチンときた風早は

「いいっ!絶対いいっ!!」

健人の言葉をまったく聞かずにその場をズカズカと後にしたのだった。

「相変わらず短気なやつだな~」

健人は苦笑しながら、その背中を見送った。


***


一度、教室に戻ろう
そう思って、階段を上ると踊り場であやねとちづに遭遇する。

「あれ?風早」

「あんたどこ行ってたの?」

「矢野、吉田」

爽子と一番仲がいい二人。
何か手がかりを知っているかもしれなかった。
だけど、
仲がいいだけに聞きづらかった。

どう切り出せば・・・
言葉を捜して迷っていると、

「爽子が探してたよ」

「えっ!?」

ちづからふいにかけられた言葉に、
風早は反射的に顔をあげた。

「なんか大事な話があるとかなんとか」

「大事な話?」

(ま、まさか俺がチョコをなくしたって黒沼知ってしまったんじゃ・・・)

嫌な汗が手に滲んだ。

「妙に神妙な顔してたけど・・・もしかして、あんた、なんかしたんじゃないでしょーね?」

「えっ!」

あやねの言葉にドキッと心臓が飛び跳ねる。

「ちょっと、うちのかわい子ちゃんになにしたのよ!」

「な、なにもしてないって!」

「本当に?」

何もしていない。
するはずがない。
大事にしてる。
誰よりも大切だから・・・好きだから。

(でも、もしも黒沼がチョコをなくしてしまったことを知ってしまったのなら、傷つけてしまったかもしれない・・・)

風早はいたたまれない気持ちになった。

「・・・・」

無言になった風早をみて、あやねが思いついたようににやっと口の端をあげてから、

「まさか別れ話だったりしてね~」

わざといじわるな言葉を冗談まじりに言ってみた。

「えっ!!」

「あははじょーだんよじょーだん・・ってあんた何マジな顔してん・・・あ、ちょっと風早!?」

それに真剣な顔で反応する風早をみて、
あやねは、まさか本当に何かしたのか?と思ったのだが、
言い終わらないうちに、風早が走り去ってしまったので聞く暇もなかった。

「何あれ?・・・爽子と本当に何かあったの?」

凄い勢いで消えた風早の行った方向をちづがあっけにとられながら見送る。
隣にいたあやねが

「どうだろ、でも爽子の様子から察するに・・まあ、いつものアレでしょ。たいしたことじゃないわよきっと」

と、肩をすくめた。

「ああ、なるほど。」

ちづもあやねの言葉で、なんとなく理解したようだった。





2へ続く

コメントの投稿

非公開コメント