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2月13日(一花さま)

散歩道の管理人一花さまより執筆。




「きゃっ、きゃあああっ!」

2月13日、黒沼家――

キッチンから何かが落ちる音と爽子の悲鳴が響いた。

「爽子!?どーしたのっ」
「どうしたんだ!?爽子!!」

あまりの大きな悲鳴に、慌てて両親が駆け込んでみると、調理中だったらしいボウルが床に落ちていて、茶色い泥状の液が散らばっている。
爽子はと言うと、へたり込むようにボウルの横に腰を下ろしていた。

真っ赤な顔の娘と、散らばった残骸をチョコレートだと認識し、今日が2月13日であることに気づいた母親はにんまりと笑う。

「どうしたんだ爽子っ!どこかぶつけたのか!?」

爽子の母親は、騒ぐ父親の背中をぐいぐい押した。

「まぁまぁ、いーじゃないのお父さん!爽子だって失敗くらいするわよ!」
「し、しかしだな……!」


遠ざかっていく両親の声をぼんやりと聞きながら、爽子は火照った頬に手を伸ばした――…………



――それは、少し前の学校での出来事……

***

「爽子、バレンタインどうすんの?今年『は』あげるんでしょ」

中庭、いつものようにお弁当をつつきながら、爽子に向かって人差し指を立てながら、そう言ったのは、矢野あやね。

「う、うん……!何を作ろうかなって考えてるんだけど」

ぽっと頬をピンクにして、爽子は卵焼きにフォークを刺した。

「あ!あれでいいんじゃん!?」
「え?何?ちづちゃん!」

可笑しそうに笑う千鶴に、爽子は、風早くんのすきなもの知ってるの?と詰め寄った。

「プレゼントは、あ・た・し!ってやつ」
「ええぇぇぇ!?」

「いーわね、ソレ!やって見れば?爽子」

千鶴の冗談にあやねが乗っかるが、爽子は冗談に気付かずあわあわと慌てている。

「むっ無理だよ!それにっ、私なんてもらっても風早くん、嬉しくないよっ!」

両手を突き出しながら、顔をブンブンと横に振る爽子を見ながら、親友二人は『喜ぶのに……』と思考をリンクさせていた。
ただ、爽子の親友二人は本当に冗談で言っただけであり、実際そのようなことが匂ってきたら阻止する気でいっぱいだったのだが。


「風早に聞いてみれば?どんなチョコがいーとか」

あやねはそう言うとウィンナーを口に運んだ。

「……うーん、あのね。で、出来れば秘密にしたいかなって」

爽子はえへへ、とはにかむと、コクコクとお茶を飲んだ。

「そっかー!楽しいよな!サプライズ!あたしいつも失敗するけど!」
「ちづは思考だだもれじゃん、仕方ないよ」

「えっあたし、だだもれ!?」

楽しそうな親友二人に、爽子は思わず目を細め、またバレンタインのことに思いを馳せ始めた。



一方で、その渦中の人、風早翔太は、悶々と悩んでいた。

今年こそ、好きな子からのチョコレートをもらえるかどうか、について。

(きっと貰えるよなっ!俺達もう、か、彼氏彼女なんだし!……で、でも付き合ってるからもういらないとか思ってたら……いや、でも…………)

「しょーた。百面相」

麺伸びてるぞ、と言いながら、学食で翔太の隣に座る龍はうどんをずずっとすすった。

「……!うわ!ほんとだ!」

恥ずかしいやら情けないやら、翔太はでろでろに伸びきったうどんをずるずると口に運んだ。
バレンタイン、で悩んでいるなんて誰にも言えたものじゃない。

(もー他の誰かにあげなくていいから、俺にだけくれたらいーのに)

ちゅるっとうどんを吸い込むと、翔太はひとつ溜め息をついた。


そんな折、教室に戻って談笑していると、翔太は嫌なものを目にしてしまう。

「さ〜だこちゃん♪チョコくれるよね?俺超楽しみにしてるよー!」

爽子の後ろをててっと走る三浦健人の姿だ。

「も、もらってくれるの?もちろん師匠の分も作るよ!」

両手に拳を作って意気込む爽子の姿を見て、翔太のお腹の辺りがムズムズしはじめる。
がたんっと大きな音を立てて立ち上がると、翔太のの周りで談笑していたクラスメートが大袈裟に驚いた。
けれど、今の翔太にはそんなことどうでもよくて――

「黒沼っ!」

健人から奪い取るように爽子の手を握った翔太は、そのまま爽子を連れてそこから走り去った。

「王子様、たいへ〜んっ♪」

ひゅうっと口笛を吹くようなあやね以外は、教室は水を打ったように静かだった。


はーはーと荒い息を吐き出す二人、何度か二人きりになったその場所は、校舎の裏側。
始めは、翔太が、龍と喋る爽子を連れ去った時。そして、自暴自棄に告白した翔太を爽子が追いかけた時――

「か、風早くん、どうしたの?」

やっと翔太から離れた、熱を帯びた手を、反対側の手で摩りながら、爽子は翔太に声をかけた。

「…………ごめん」

走っている間に、翔太は少しずつ冷静になっていた。でも急には止まれなくて、結局二人きりになれるところまで走ってきてしまったのだ。

「え?」
「急に、連れ出したりして……」

「え、ううん。それは全然構わないのだけど」

何か用事があったんじゃ、と続ける爽子に、この際言ってしまえ、というような勢いで、翔太はじっと爽子を見つめた。

「…………三浦に、チョコやるの?」
「……え、う、うん。もらってくれると言うので…………」

「俺には?」

投げ掛けられたその言葉は、爽子を大層困惑させる。秘密にしようと思ってはいたが、問い掛けられては答えないわけにいかない。

「え、えっと……その」

言い淀む爽子の何を誤解したのか、翔太はがくりと肩を落とす。

「三浦にはあって、俺にはないの……?」
「えっ…………?」

何を言われているのかわからないものの、翔太が悲しんでいることだけは爽子にもわかった。

「風早くん……?」

「俺って、黒沼の何?」
「え、えっ、えっと……か、…………彼氏」
「だよね?彼氏にはなくて、あいつにはあるんだ?」

翔太の口調が低く早くなり、爽子はびくりと肩を揺らす。その頃には、翔太が勘違いしている事に爽子は気付いていた。
しかし、それを指摘する前に、翔太によって爽子は校舎に体を押さえ付けられていた。
顔を挟むように両腕を置かれ、あまりの近さに、指摘することも忘れて爽子は顔を真っ赤に染め上げる。

「かっ風早くん!?」

「俺別に、チョコが欲しいんじゃないよ。黒沼の気持ちが欲しいんだ」

そう言うと、翔太は片手を爽子の頬に移し顔を近づけて行った。

「チョコ、ないならこれでいーよ」
「違うの!!!!」

もう少しで唇が触れそうなところで、爽子が叫ぶように言った。
それを合図にしたように、翔太の動きがびたっと止まる。

「違うの、風早くんの分は、特別なの……」

爽子の消え入りそうな声を聞いて、翔太は自分を取り戻しつつ、ゆっくりと爽子から離れた。

「と、とくべつ?」

真っ赤な顔の爽子に釣られるように翔太も顔を赤くする。
爽子はそれ以上言葉にならないようで、コクコクと何度も首を縦に振る。

「じゃ、じゃあ俺、期待してて……いいの?」

翔太は隠すように口を覆って、2・3歩後ずさった。

「期待に添えるかはわからないのだけれど……っ!……でも、あれ?」
「え?」

「さっき、チョコないならこれでって……」

これってなぁに?と首を傾げる爽子だったが、翔太は慌ててそれを否定した。

「何でもないから!いいから忘れて!」



***

そこまでを思い返して、冒頭の爽子に戻るのだった。

あやねや千鶴、その他に渡すチョコレートは既に作り終えていて、翔太の分、つまり『特別』に取り掛かっている爽子は、あの出来事を思い出さずにはいられないのだ。


そうして、何度も失敗を繰り返しながら、爽子の愛をふんだんに込めたチョコレートが出来上がり、あとは翔太の手へ渡るのを待つのみだった。

決戦は明日――2月14日、聖バレンタイン・デイ。






きゃぁ~~~
ステキすぎます!
焦太くんが好物の私にとってはもう・・・
この上なく親指を立てたい作品ですね!!
やっぱり全開もらえなかっただけあってそのショックはおおきかったんだろうなって
思いますWw
無事チョコは渡せたのかすっごく気になるところですね~W


一花さまへこの作品について感想をされたい方はぜひぜひコメントをお願いしますWw

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ちょこのかわりはソレでいいんだw愛いヤツめwww
純情爽子たんは思い出してしまうわけですね~。
いろんなところで飛び交う前日のやり取りはなんだかほほえましいけど本人たちは(いや若干一名)必死よねw
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