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あい☆いっぱい(えみぞぅさま)

えみぞぅさまより、
小説です(^^
―2月4日 2年D組の教室―

「矢野。黒沼知らない?」
放課後の教室で風早翔太は矢野あやねに声をかけた。

「爽子?もう帰ったわよ。」
「え?」
ホームルームが終わって5分と経たない間の出来事である。
朝2人で登校した時、一緒に帰れない事は聞いていた。
矢野達とどこかに行くのだろうと思っていたので、帰りの挨拶くらいしようと思い付いた矢先の事だった。
(矢野や吉田と一緒じゃないんだ…)
吉田は前の黒板辺りで遠藤や平野と談笑している。
(何をそんなに急いでいたのだろう…)

* * * * * * * * * *
2月5日

「おはよー!爽子」
「お、おはよう。風早くん」
「昨日帰るの、早かったね。」
「う、うん。ちょっと急いでいて…」
「気づいたらいなかった。」
どうしたの?と聞こうとした時、後ろから大きな声が聞こえてきた。
「さーだこちゃん!」
「し、師匠!おはようございます!」
(三浦!)
「昨日は思わぬ所で会ったね~」
「は、はい。その節はお世話になりました」
(え?)
「いーんだよ!俺、師匠だし。また良かったら付き合うよ。」
「お、お手間取らせないように頑張ります…」
楽しそうに話す二人を見て、釈然としない風早だった。

* * * * * * * * * *

(あれから爽子にあの事を聞けないままだ…。)
あれから爽子と三浦の間で特に変わった様子はない。
大した事ではなかったのであろうと思うが気にはなる。
何度か聞こうとしたがタイミングがつかめないままだった。
(連日のように矢野や吉田と帰ってしまうしな…)
なにやら楽しそうな三人を見ていると、まあそれも良いかと思っていた。

しかし一週間続くと爽子とゆっくり話をしたい気持ちが強くなってきた。

(今日は待ってみよう。)

教室には矢野や吉田はいない。
先生の手伝いをしている爽子を待っていたら話くらいは出来るだろうと思った。

* * *

ガラガラ…。

「か、風早くん!」
「お疲れ!」
「どうしたの?」
「爽子を待っていたんだ…」

ぽっと花が開いたように頬が赤くなり嬉しそうに微笑む爽子を見て、心が和んで来るのを感じた。
何も聞かなくても良いかと言う気持ちになる。

(いやいや!ちゃんと聞こう…。)

「わ、私も風早くんに話があったの。良かった」
いつも爽子の言う事をきちんと受け止めたいと思っている風早である。
爽子の顔をしっかりと見つめた。

「ま、前に約束していた日曜ですけど…」
見つめられて爽子の言葉がつまる。
(そうだ。前にした約束…)
もう随分前にバレンタインの日に会おうと約束していたのだった。

(な、なんか用事が出来たとか…)
風早の顔に陰りが浮かび始めた時、再度爽子は口を開いた。

「わ、私のウチに来て貰えないかな」
爽子は真っ赤になりながらも言う…。

(え?え?え?)
思っていた事と正反対の事を赤くなりながら言われ、風早も赤面した。

「む、無理じいはしないので…。」
少し青くなりながら爽子は言う。
「無理じゃない!大丈夫!行くよ!」
勢い込んで風早は言った。
「良かった~」
珍しく小躍りしそうなくらい喜ぶ爽子を見ていると風早も嬉しくなってくる。
「良かった。はははっ!」

(風早くん、喜んでくれている…。私、期待に添えるように頑張るよ。)
小さくガッツポーズをとる爽子であった。

* * * * * * * * * *
バレンタイン当日

ピンポーン

「か、風早くんいらっしゃい。寒いところ来てくれてありがとう。」
よ、ようこそと爽子は緊張気味に言う。
「こ、こんにちは」
つられて風早も緊張する。
爽子の家は二度目なのである。まだ緊張するのも無理はない。

リビングから爽子の母が顔を出す。
「風早くん、いらっしゃい。爽子ったらね~。すごく張り切っているのよ~。」
「お、お母さん!」
「あら言っちゃいけなかった?ごめ~ん。ふふっ。風早くん、ゆっくりして行ってね。」
「あ、ありがとうございます。」
父は仕事で留守なのと言いながら爽子は風早を部屋に通す。

パタン

緊張するね~と赤くなりながら、爽子は風早にクッションを勧める。
「か、風早くん!プレゼントを用意したいのですが!ちょっと時間がかかるのだけど…。ま、待っていて貰えますか?」
風早は一瞬不思議そうな顔をしたが笑顔で続けた。
「オッケー!待っているよ。」

* * *

「お待たせしました~」
15分くらいして爽子がトレーを持って部屋に入って来た。

「風早くん!これっ!」

トレーの上には湯気の上がったコーヒーカップが乗っていた。

「すっげぇ!!!」
ぽってりとした厚地のコーヒーカップを覗いて、風早は歓声をあげた。
ホットチョコレートドリンクの上にフォームミルクでハートをかたどってあった。

「すげー!爽子が入れたの?」
「ここからは見ていて。」
爽子はチューブに入ったチョコレートソースを取り出す。

丁寧に筆記体で“LOVE”という文字を描いていく。

書き終わると爽子はほっと息を吐き出した。
「本当にすっげえ!!ラテアートって奴?」
「正式なラテアートでは無いのですが…。」
「そんなの関係ないよ!初めて見た!沢山練習しただろ!」

風早はすっげぇを連呼している。
爽子は褒められた嬉しさにさらに顔を上気させた。

「父が道具を買ったのでチャレンジしたくて。あやねちゃんとちづちゃんも練習を手伝ってくれたんです。あ、師匠も!」
「三浦?」
「本で調べても良くわからない部分があったので、実演を見に行った日があって。」
その日、矢野も吉田も都合が悪かったらしい。
それでも日程を変更したくなかった爽子は一人で行った…と。

「制服のまま行ったら、何だか敷居が高そうなカフェで…」
入り口で躊躇していたら三浦に会ったと爽子は言った。
「し、師匠はバリスタさんにいろいろ聞いてくれて。すごく助かりました」

「そ、そっかー!」
(よ、良かった~)
顔を背け、手で顔を隠す。
「ちょっと今、顔見ないで」
(俺、顔赤すぎるはず…)

真っ赤な顔を見せたくなくて。
自分を思ってくれる気持ちが嬉しすぎて。
言葉だけではうれしい気持ちを伝えられないような気がして。
振り向いて、爽子を引き寄せて抱きしめる。
幸せな気分で満たされる。

耳元でありがとうとささやくと爽子の耳が真っ赤になる。

かわいい。かわいい爽子。
ずっと一緒にいようね。

「また作ってくれる?」
これからも一緒にいようねって意味だったのに。

「今度は本当のラテアート!頑張ります!」って君は言うんだ。

~fin~

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他の作品は爽子の家には誰もいない設定がおおかったんですがこの作品で初めてお母さんがでました!(笑)
しかもチョコレートがラテアート(もどき)だなんて!
す、すごい・・・発想がすごすぎます!