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それぞれのバレンタイン ⑤(嬉々さま)


『それぞれのバレンタイン ⑤』



去年のバレンタインは
風早くんへの想いをこめてチョコを作ったけど
自分の想いの深さに怖くなって
チョコを渡すことが出来ませんでした。


でも今年は・・・・・・。


今年は風早くんに
チョコをちゃんと渡すことが出来そうです。


去年は風早くんと付き合えることになるなんて
思ってもみなくて。
ううん。
付き合いたいって思ってた。
心のどこかで期待してた。
だから怖かったの。
期待しすぎて
でも断られたらどうしようって・・・。


今年は風早くんもらってくれるって言ってた。
当日楽しみにしてるって。
チョコ喜んでもらえるかもしれない。


去年渡せなかった分
今年はもっとちゃんと作りたいな。
今の気持ちをこめて。


風早くんのこと
あの頃よりも
もっともっと大好きになってしまって。
今は去年よりも更に欲張りになってしまっている。
けど今年は大丈夫。
もう怖くない。
風早くんも
同じ気持ちで
好きだって言ってくれたから。



家庭科の調理実習で作ったチョコ
風早くんには当日別なのをあげるつもりでいたから
少ししかあげられなかったんだけど
風早くんは
すごく喜んでくれて。
そんなことなら
もっと風早くんに作っておくんだったかも
なんて思ってしまった。


当日も風早くん喜んでくれるといいな。



■□■□■□■□■□



いよいよバレンタイン当日。
いつもは雪がちらついているんだけど
今日は朝から晴天で
気持ちいい。


ピンポーン
と家のチャイムを鳴らす。


「はーい。」


と黒沼の声がして
玄関のドアが開く。


「あ、風早くん。
いらっしゃい。」


そう言って出てきた黒沼は
エプロンをしていた。
お花模様の
女の子らしい可愛いデザインのエプロン。


・・・かわいいな。
黒沼と結婚したら
毎日見れるんだろうな。
黒沼のエプロン姿。


「風早くん?」


どうかしたの?と
心配そうに黒沼は俺の顔を見る。

「ううん。
なんでもない。
お邪魔します。」


・・・変に思われなかったかな。
ちょっと考えすぎたな。
気をつけよ。


「どうぞあがって。
今、お菓子とか持っていくので
先に私の部屋に行っててくれる。」
「うん。
あれ?
今日、お父さんとお母さんは?」


いつもなら黒沼のお母さんが出てきて
お父さんも少し離れたとこから様子を伺ってるんだけど・・・。
今日は姿が見えない。


「あ、今日はお出かけしてて
夕方まで帰ってこないの。」
「え?!
そうなんだ。」
「うん。
でも気にしないでね。」
「じゃあ、運ぶの手伝おうか?」
「ううん。大丈夫。
待ってて。」
「うん。
わかった。」

・・・なんだ。
そうか。
黒沼のお父さんとお母さん
今日は家にいないんだ・・・。


!?

ってことは今、
黒沼の家に2人きり?!
しかも黒沼の部屋で・・・。


「おわっ!」


階段を上りながらそんなことを
考えていたら
ずるっと足を踏み外しそうになってしまった。


・・・やばいな。
大丈夫かな、俺・・・。


黒沼の部屋に入り
用意されていたクッションにちょこんと座る。


・・・なんだか落ち着かないな。
やっぱり手伝ってきた方がよかったかも。


ただじっとしてると
変なことを考えてしまいそうで
黒沼の部屋を見ることにした。
黒沼の部屋って
いつも思うけど綺麗だよな。
整理も掃除もいきとどいてて
俺の部屋とは大違いだ。


ふと1枚の写真が目に留まった。
あ、あれ1年時の。
体育祭の打ち上げの時のカラオケの写真。
俺の肩に寝ていた黒沼がストンと寄りかかってきて・・・。
矢野に撮られちゃったんだっけ。
・・・あんときはまだ黒沼と
付き合えることになるなんて思ってもみなかったんだよな。
付き合いたいとはすごく思ってたけど。


そういえば去年のバレンタインも
黒沼にもらえなくて
そのことが自分で思っていたよりも
ショックだったっけ・・・。


今年こんな風に
黒沼ん宅に来て
チョコをもらうなんて
去年の今頃は考えてもみなかった。


でも今は・・・。


カチャ
部屋のドアが開く。


「風早くんごめんね。
遅くなっちゃって。」
「ううん。
あ、すごくいいにおいする。」


甘くて優しい香りが部屋中に広がる。


「紅茶を入れてみたの。
ケーキを作ったので。」

そう言って黒沼は
テーブルの上に紅茶とケーキを置く。


そして・・・


「はい、これ。」


とそっと可愛くラッピングされた箱を手渡してくれた。


「・・・ありがとう。
嬉しいよ。」


金曜日に黒沼にもらった調理実習のチョコも
嬉しかったけど
このチョコは
俺だけのために
黒沼が作ってくれたチョコだ。


去年欲しかったチョコ。


すごくすごく欲しかった
黒沼の想いの詰まったチョコ。

「開けてもいい?」
「うん、食べてみて。」


ラッピングを丁寧にはがし
箱のふたを開ける。


箱の中には
トリュフとハートのチョコが入ってた。


「・・・風早くんは本命だから・・・・・・
ハートのチョコにしてみたんだけど。
でもハートだけじゃ恥ずかしくなっちゃって・・・。」


ちょっと頬を染めて黒沼が言う。
ハートのチョコをひとつ口に入れる。


「おいしい!
この間のチョコもおいしかったけど
これもおいしいよ。
黒沼ってほんと料理うまいのな。」


黒沼が作ってくれたチョコは
口の中ですぐにとろけた。


「本当?」


心配そうに黒沼は聞く。
「うん。ほら、黒沼も。」


チョコをひとつ取り
黒沼の口に入れる。


「・・・うん、ほんとだ。
おいしい。」


そう言って微笑む黒沼を見てたら
気持ちが抑えられなくなってきて・・・。


そっと黒沼の手を掴む。

「か、風早くん?!」

俺の行動に驚く黒沼。
いつもだったら
こんなことしないんだけど
でも今日は・・・


静かな部屋で
黒沼と2人きり・・・
黒沼の手を掴んだ
自分の手が熱くなる。


そして早まる鼓動。


2人の視線が交じわう。


「そらさないで
こっちみて・・・。」


いつの間にか口から出ていた。


そして俺はそっと黒沼にくちづけた。

ピンポーン


「!!」
バッと2人して勢いよく離れた。
誰も見てないんだから
慌てることはなかったのに。

「だ、誰だろ?
ちょっと見てくるね。」

黒沼はスクッと立ち上がると
慌てて階段を駆け下りてった。

・・・・・大丈夫だったかな。
思わずキスしちゃったけど。

我慢できなかった。
今までずっと我慢してきのに。

でも
黒沼とキス出来てよかったな。

俺と黒沼のはじめてのキスは
甘い甘いチョコの味がした。



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2人きりという単語で階段を踏み外しそうになったのにわらえましたWwなんかいいですねーそれぞれのってお話が。みんなそれらしくってWw