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ランク・アップ(かほさま)

風早×爽子
付き合って初めてのバレンタインデー







「よかったわね。爽子。熱が下がって、3日たったし、今日は学校に行ってもいいわよ。」

部屋に入り、カーテンを開けた母は、彼女の様子を伺う。

うっすらと目を開けた爽子は、眩しそうに目を細めた。

「どうする?もう1日、様子を見る?」

爽子は、ゆっくりと身体を起こした。

「行く・・・」



最近は、学校が楽しくて・・・毎日がふわふわしていたから・・・その日、身体が火照っていたのもそれが理由だと思っていた。

けれど、その晩、頭が割れるような頭痛と共に高熱が出て・・・夜中に病院に連れて行ってもらって判明したのが、今流行りのインフルエンザ。

正直、これまで、何ひとつ流行にのったことなどなかった爽子が、のった波はインフルエンザであった。

ちづとあやねという『ともだち』ができて、果ては大好きだった彼に想いが届いた・・・。

(幸せすぎて、バチが当たった?)

熱にうなされながら、ふとそんなことを思った。

けれど、インフルエンザに罹ったことを知ったちづたちや風早から届くこまやかなメールが、彼女の罪悪感(?)をやわらげてくれるのだった。



熱が下がってからも、最低2日は様子を見なければいけないということで、1週間近く休むことになった。

学校に行く途中で医者により、『治癒証明書』をもらって学校に向かう。

これまでも、ほとんど皆勤賞に近い彼女である。

久しぶりに向かう学校への足取りは、軽いはずであった。

ところが、今日の彼女は、なんだか足が重い。

―2月14日―

世の中が甘ったるくなるこの日が彼女にとっては、憂鬱な一日と感じられるのだった。



2時間目の休憩に学校についた。

教室に入った途端、だべっていたちづとあやねが飛んでくる。

「爽子!あんたどうしたの!?」

ちづがそう言えば、あやねが苦笑しながら、

「言っては悪いけど、今日のあんた、『貞子』じゃなくて、別の都市伝説を思い出したわ」

黒髪の長髪にマスク・・・そして、なんだか暗雲オーラを纏っている爽子は、いまさらながら、そういえば、自分の周りに人が近付かなかったことに気がついた。

そう言いながらも、優しい眼差しで自分を眺める二人を見ていると、急に泣けてきた。

「ちづちゃん・・・あやねちゃん・・・」



「え!?黒沼、来てたの!?」

次が体育の授業のため、休憩時より校庭で龍たちとボールを蹴っていた風早は、すぐに周りを見回す。

「どこだよ?」

「やっぱり体調が悪いからって保健室だってさ」

急に心配になって・・・何より顔が見たくて・・・ちょっとサボってやろうか・・・と考えた瞬間、頭をがしりと片手で掴まれた。

「おまえの考えなんざ、お見通しなんだよ」

ふんっと鼻で笑われながら、頭を掴んでいる手に力を込められる。

「や、やめろよ!!ピンっ!!」

「メモらせねーよ!」

こうして、彼は、彼女の元に向かうことは出来なかった。



一方、ぐすりと泣きじゃくる爽子を真ん中に挟んで、ちづとあやねが彼女の背中をゆっくりとさすっている。

二人は・・・女の武器・・・「月の腹痛」を理由に、爽子と共に保健室を陣取っていた。

「ご、ごめん・・・なさい。二人とも、た、体育に行って」

「いいのよ。あたし、まったく未練ないし。あー、ちづは、行っといで。今日、サッカーでしょ」

ちづがハッとした。

頭の中で、「体育(サッカー)」と「爽子(親友)」を天秤にかけたようだった。

「行かねー!」

もちろん『義理人情』に厚いちづは、そう断言し、爽子に言う。

「体調悪いんなら、帰ったほうがいいんじゃないのか」

爽子が首をぶるぶると振る。

「ち、違うの・・・わ、私・・・情けない」

「?」

「き、去年・・・わ、渡せなくて・・・今年は、絶対・・・渡したかった・・・のに・・・」

ちづとあやねは、顔を見合わせて、なんとなく様子を察したようだった。

「あー今日ね・・・バレンタインか」

爽子はこくりと頷き、

「い、いろいろ考えてたのに・・・」

急な発熱に材料さえも買いに行けなくて・・・

「風早、そういうの気にする奴じゃないと思うけどね」

あやねがそう言い、

「これから、何回もやってくるバレンタインのうちのたったの1回じゃん!」

ちづはそう慰めるが、爽子はうつむいたまま・・・。

・・・バレンタインは何度もやってくるけど・・・両想いになって初めてのバレンタインは一度だけ・・・。

「じゃあさ、市販のものでもいいから、とりあえず渡して・・・手作りは、またにすれば?」

「また?」

「あいつ、喜ぶと思うよ。今日ももらえて、また後日、手作りのやつもらえれば」

そう言いながら、二人は、内心、(あいつは何でも、何度でも・・・爽子がくれるもんならなんでも喜ぶ)と信じて疑わなかった。

「今日はさすがに帰りは風早に譲るとして・・・昼、買いにいくか」

風早に譲るのは『爽子』、買いにいくのは『チョコ』である。

「あ・・・っと、無理かも」

とあやねがムッとしてつぶやいた。

「なんで?」

「今日、ピンが昼に校門に立つって言ってた。ほら、あいつ、こういうイベント、邪魔したいタイプだし」

「やな奴だなー」

「あ、ピンにやるのを買いに行くって行けばいいのか」

とあやねは呟いたが、校外へ出ることは禁じられているので、そこを無理してまで買いにいかせるには気がひけた。

・・・爽子は、真面目だから。

ちづが思い出したようにポンと手を叩く。

「ちょっと待ってて!!」

ダッシュで保健室を飛び出たちづは、言ったとおり、『ちょっと』ですぐに戻ってきた。

息は切れているが、手になにかを持っていて、それを爽子に手渡す。

「ちづ・・・何それ?」

「野球のボール・・・の1/4モデルチョコ」

苦笑いするちづの横で、爽子は珍しそうに手の中のチョコを見やった。

「結構でかいわりに安くてさー、龍にと思って買ったんだけど、もう一個、自分用に買ってたんだよねー」

確かに大きい・・・食べるとかなりのボリュームはあるだろう。

「で、でも、ちづちゃんが自分で・・・」

「貸しとくよ。・・・で、爽子の手作りチョコ、あたしにも頂戴ね!」

えへっと笑うちづに、やっと爽子も笑みを取り戻した。

・・・と、じっとチョコを眺めながら、考えていたあやねがにやりと笑う。

「愛が足りないわね」



「身体、平気?」

帰り道・・・やっと彼女の隣のポストを手に入れた風早は、まず彼女の身体を気遣った。

こくんと頷く彼女を見て、ホッと息をつく。

「久しぶりだね・・・マジ・・・顔見れてうれしー」

そう言って、自らの言動に照れてしまい、そっぽを向く。

それは、彼女も同じだった。

でも、今日は・・・昨年のリベンジで、自分の気持ちがたくさん詰まった手作りのチョコを渡したかった・・・。

ほろりと一粒涙が零れ落ちる。

「く、黒沼?!どうしたの?!」

まるで、彼女の涙の理由がわからない風早は、おろおろとうろたえる。

「か、風早くんに・・・チョコを・・・私の作ったチョコを・・・」

「何?」

鼻をぐすぐす言わせながら、爽子はちづからもらった「野球ボール1/4モデルチョコ」をずいっと差し出した。

「ほ、ほんとは、私が作ったのを渡したかった・・・」

案外ボリュームのあるそのチョコを受け取った風早は、一瞬ぽかんとしてすぐに微笑んだ。

「でも、これ、くれたじゃん。黒沼。・・・去年はもらえなかったんだからね!」

と口を尖らす。

「そ、それは・・・」

「だから、いいよ。今年は本命からもらえたんだから、それで十分!」

(ほ、本命・・・)

爽子の胸がどくんっと鳴る。

彼女の頭を撫でながら、

「それにさ・・・もう、今は黒沼の気持ちがわかってるんだから・・・このイベントは俺にとって大した意味はないよ。・・・黒沼がいればいいんだ」

爽子の涙が乾いていく・・・。

「あ、でも、また今度、黒沼の手作り、期待してるね」

そう笑った風早は、

「・・・俺、言ってること、矛盾してんなー」

・・・と呟きながら、彼は、野球ボールチョコに手をかけ、口に入れた。

大きな野球ボールチョコは、案の上、彼の口の中の大半を占める。

しゃべれなくなって、指で輪を作り、「OK」をしてみせる。

嬉しそうに笑って・・・


―愛が足りないわね―


あやねの言葉が、爽子の中で響く。


―そんなことできないよっ!あやねちゃん!―


確かに自分はそう言った。


でも・・・彼は・・・私の気持ちを思いやってくれて・・・こんなに嬉しそうに食べてくれてる・・・。


・・・やっぱり、愛が足りない・・・?


口の中で少し小さくなったチョコを右頬に押しやり、彼が彼女の様子を伺う。


「ろ(ど)したの?くろのお(黒沼)?」


まるで、右頬にこぶを作ったような風早に向けた彼女のまなざしはなんだか緊張していて・・・

おまけに彼女は、ぎゅっと両こぶしを握っていた。


――― ほんの一瞬で、チョコに愛が注入できるから・・・そして、


――― 間違いなく、風早は喜ぶから・・・


(よ、喜んでくれるかな・・・あやねちゃん)


彼女は、決心して、彼に向かっていった。


驚いた顔をしている彼の腕に手をかけて・・・そっと引き寄せ・・・右頬のこぶに・・・


―――そっと口づけた・・・。


「あ、あああああ、あいを、ち、注入し・・・てみました」


「え・・・うわっ」


タイムラグで訪れた衝撃に、力が抜けた風早は、何とかへたり込むのを免れて、ふらふらとし、近くの電柱にもたれかかった。


「く・・・黒沼あ・・・」


「・・・ご、ごめんなさいっ」


すぐに謝った爽子に、首を振った風早は・・・緩む表情を隠しきれないまま・・・


「・・・去年から・・・ランクアップしすぎだろお・・・」





                         <END>


おそまつさまでした。変な話ですみません。
甘さは、他の方々にまかせてしまいます。
はるさんvつむぎしゃんv素敵なお祭りに参加させていただいて有難うございました^^




ランクアップ!
なるほどランクアップ!
タイトルにすごーく納得いきました!!
風邪で手作り渡せなくて。
どうするのかな爽子はってハラハラみてたら・・・
まさかこんな展開が待ち受けていようとは!!
なんだか興奮せずにはいられませーんっ!!!
それにマスク爽子にすごい笑ってしまいましたW(ぷぷ)
毎年爽子は恋愛初心者マークからどんどん成長し、風早もその言動に
焦らされたりなんてするんだろうなっておもったら
もうこれからを期待せずにはいられません!
なんだか先の想像がたのしくなっちゃったお話でしたW
本当にありがとうございますーーー!!

はる

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