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Present from you(芦屋トモさま)

芦屋 トモさまよりいただきました。
風早×爽子
未来話



* Present from you *

Written by Tomo.Ashiya from *+ Honey Sweet +*

****************


色々な気持ちを知って
色々な体験をし
色々な想いを持った 高校を卒業して

私たちは、大学へ進んで
その後、お互いに目標としていた仕事に就いた。

社会人1年目が終わろうとしている。
風早くんと私は、22歳になった。

風早くんも私も、つい、仕事に全力を注いでしまう。
そのせいで、時には逢えなくなることも。
・・・そんな生活も、早くも1年弱。

2010年、2月。
風早くんとお付き合いをするようになってから、ゆうに6年の歳月が流れた。



***


・・・正直、仕事ってのは思った以上に重労働で
体はもちろん、時にはキモチまで負けそうになる。
俺、この数日は本当に身も心もしんどくて。

(爽子に、会いたい・・・)

早く、爽子に会いたくて仕方がなかった。
週も半ば、折り返し地点の水曜日。
残業につぐ残業を重ねた毎日のせいで体が重い。
やっとの思いで帰ってきた自宅。
今日はさすがに連日の疲れがたまり、早々に切り上げて帰ってきた。

(・・・声だけでも、聞きたい・・・)

毎日毎日午前様の帰宅なので、電話はおろかメールも気が引けた。
爽子も忙しそうに、でも楽しそうに仕事をしていたから。きっと疲れているだろう。
でも、今日は違った。時刻は午後22時、さすがにまだ起きているだろう。
帰り道で調達した、つまみのような夕飯とミネラルウォーターをテーブルに置き、
着ていたスーツを脱いで熱く湯をはった風呂に浸かった。
雪がしんしんと積もるこの季節、冷えた体にじんと熱さが広がった。

(出たら、爽子に電話しよう。いつから、会ってないっけな)

指折り数えそうになり、情けなくなってやめた。
会えなかった日々は爽子が足りなくて満たされないけれど、それよりもこれからのことを考えたかった。
このあと、思い切って会いに行ってしまいたい程だ。



風呂から上がり一息ついていると、静かに携帯が鳴った。
思わず携帯に飛びつく。爽子専用の、着信音だったから。
通話ボタンを押して、逸る心をぐっと抑えて、電話に出た。

「・・・もしもし」
『あ・・・か、風早くん。こんばんは・・・!』

優しく耳に届くその声は、焦がれてやまないその人のもの。
電話の向こうに浮かぶ爽子の姿を思い描いて、自然と顔がほころんだ。
いま、大丈夫かな!なんて、気を遣う爽子。
変わらないんだ、何も。
全てが、あの頃のままで。
全てが、愛おしくてたまらない。

「うん。爽子、元気にしてる?」
『うん・・・!私は、元気だよ!風早くん、忙しそうだね・・・毎日、お疲れ様。大丈夫?』
「ははっ、さっきまで超疲れてたけど、爽子の声聞いたら元気でた!」

すごいな。声を聞いただけで、こんなに力を貰える。

『あ、あのね!その・・・風早くん、今週の日曜日・・・
空いているかな・・・?お暇なら、あ、逢いたいな・・・!と思って・・・!』

―えっ。
・・・爽子から誘ってくることなんて、数えるほどしかなかったから俺はしばらく黙り込んでしまった。
・・・聞き間違いじゃないよな。爽子が、逢いたいって・・・

「日曜・・・あっ。バレンタインだ」
『えっと、その、そうなの・・・!だから、是非逢いたいのだけれど』
「あー俺、絶対その日は仕事行かねー!絶対、何があっても休む!!」
『最近、休日出勤多かったものね・・・!あ、でもせっかくの休日を』

俺は爽子が全てを言い終わる前に、自分の言葉でそれをさえぎった。

「いーの!爽子に逢えたら、疲れなんて吹っ飛ぶよ!もう、約束!」
『約束・・・!うん、ありがとう、風早くん・・・!』

それから俺たちはたわいのない話を寝る間も惜しんで続けた。
さすがにそろそろ寝ないと明日がヤバイ、という時間になって、渋々切り上げようかとしたときに、爽子が言った。

『あのね、日曜日・・・私に、任せてくれないかな・・・!行きたいところが、あるの』


バレンタインなんて、口実でいい。
散々電話で喋った後になんだけど、今すぐ爽子の元に飛んで行きたい。
でも、爽子が一生懸命日曜のことを考えてるなら・・・
あと、3日。頑張ってみるか。




***


2月14日、日曜日。
この日が日曜日でよかった。
今日のために、木曜から昨日の休日出勤まで毎日深夜まで働いた。
そのくらいしないと、今日の休みはなかったかもしれないから。
・・・久々に爽子に会える休日。
爽子は、どこに連れて行ってくれるのだろう。


待ち合わせは爽子の提案で、2人の最寄り駅にAM10:30。
少し早いけど、という爽子に、俺はつい本音を言ってしまった。
少しでも長く一緒に居たいから、いいんだ。
それを聞いた爽子は、電話越しで頷いてくれた。
『私も、・・・風早くんと、長く一緒に居たいから・・・ありがとう・・・』
こんなときでも、爽子は可愛いんだ。
朝、手早くシャワーを浴びて、身支度をした。
・・・今日も寒い。暖かくして行こう。
爽子からもらったマフラーと手袋がお供だ。
これ以上俺を暖めてくれるものは、爽子本人以外、存在しない。



待ち合わせよりも15分早く駅に着いた。
それでもいつも、爽子は俺よりも先に到着していた。
何度トライしても一向に勝てる気配がなくて、以前聞いてみたことがある。
待っている間に考える、俺のことが好きで、すごく幸せだから、といつか言っていた。
今も、それは変わっていないんだろうか。
こんなに寒いのに・・・それでも、俺を待っていてくれる。
爽子の姿を目に留めて、一瞬で心に暖かいものが広がった。

「爽子!!」
「あ、風早くん!早いね!」
「ははっ、早いのは爽子だろ」
「うん・・・わ、私のは。いつもの、だよ」

寒さで赤くなった頬をさらに赤くして、爽子はごにょごにょとつぶやいた。
恥ずかしそうに微笑んだ爽子は、・・・久しぶりに会うからかもしれないけど、本当に可愛かった。

「前に、話したことがあるけど・・・待っているとき、幸せだから」
「・・・その幸せを、たまには俺にも味わわせてよ」
「えっ、待たせるなんて、申し訳ないので・・・!」

ダメ!と拒む爽子。
・・・変わってないんだな。
俺たち、何にも変わってない。
歳や見た目や(特に爽子はとても綺麗になったと思う)、そういう部分は変わっても。
中身は、ずっと変わらないで、今も2人で歩き続けている。
・・・この先も、そうであってほしいと祈る。


爽子の言うとおりに駅で切符を買う。
最近は車での移動が多いから、2人で電車なんて久しぶりで新鮮だ。
どこに行くんだろう?と気になったけど、聞かないことにした。
爽子と2人、電車に揺られて出掛ける。
毎日乗っている電車も、急に色鮮やかに見えた。


***


乗り継ぎを重ねて辿り着いたそこは、今では珍しい木造の駅舎だった。
電車も、電車というより列車というか・・・二両編成のレトロなものだった。
束の間、タイムスリップしたかのような感覚に陥る。


「風早くん・・・寒いけど、大丈夫かな?」

バレてしまうといけないので、寒いところに行くとは言えなかったのだと爽子は申し訳なさそうに謝る。

「大丈夫!・・・、ホラ、爽子にもらったマフラーがあるし!」

役に立ててよかった、と爽子はふわりと笑った。
久しぶりに見る爽子の笑顔に釘付けになってしまう。
目が合って、しばらくじっと見つめあった。
だんだん、爽子の顔が赤く染まる。
そんな爽子を見ていたら、俺も恥ずかしくなってきてしまって。
二人で頬を赤くして、笑いあった。


俺は爽子の後について歩いた。
まだ綺麗なままの雪の絨毯に、2人で足跡を刻む。
爽子の白い吐息がすごく愛おしい。
空はどんより曇り空で、白い雪がはらはらと舞い降りてきていた。
しばらく無言で歩くと、爽子が俺の近くに寄ってきた。

「もうすぐなの。・・・この先」

川沿いの、堤防のような場所。緩い坂の階段をのぼる。


「・・・う、わぁ・・・」

階段をのぼりきって視界に飛び込んできたのは、一面の白、白、白。
雪のない時期、ここにはいったい何があるんだろう。
さえぎるもののない、あたり一面の雪景色。
その中、視界の端に一本だけ黒々と樹が立っていた。

「爽子、ここ、何?すげー!」

雪景色なんて見慣れている俺たちだけど、このスケールは別問題だ。

「映画みてー!超、キレー!!」

爽子は、俺の感動が伝わったのか、しばらくこわばらせていた顔をふっと緩めて笑った。

「よ・・・よかったぁ・・・っ。風早くんに、ここの景色を見て欲しかったの」

俺は言葉を失ってその白黒の世界に入り込んでしまった。
つまらないことなんてどうでもよくなる。
世界はまだ、こんなにも美しい。

肌を刺すような冷たい空気
それを癒すかのように降る優しい雪
音のない空間

俺がじっと黙り込んでいるその少し後ろには、同じように口をつぐんだ爽子が佇む。
振り返ると視線が合わさった。
寒さに赤くなった頬と唇。
ふんわりと笑う爽子。
色のない世界で、そこだけ鮮やかに色づいて見えた。

「なんか・・・こういう景色を見ると、今、悩んでいることとか、小さいなーって思えて・・・
体も疲れているけど、また、頑張ろう!って、しっかりしなきゃ!って思えて・・・」

爽子は一歩二歩と歩みを進めて、俺のすぐ横に立った。

「私、風早くんが、少し元気ないなって思って・・・
風早くんも、そんな気持ちになってくれたらいいなぁ、って・・・」

爽子が全てを言い終わる前に、俺は爽子を抱きしめた。
心配をかけていたという申し訳ない気持ちと、そんな俺でもこうやって優しく包んでくれる爽子への高まる思いと。
今すぐにでも、爽子の全てを自分のものにしてしまいたくなって、
・・・俺は今、大層情けない顔をしているんだろう。

「爽子。・・・ありがとう」

それを言うのが精一杯だった。



爽子がくれたこの景色を残しておきたくて、携帯で写真を撮ってみた。
だけどこんなに小さな枠の中に、こんなに大きくて力強い世界がおさまるわけもなかった。
そっと携帯をしまって、俺はもう一度無言でその景色を目に、心に刻み付けるように、立ち尽くしていた。


寒さで冷えきった爽子の手に触れて、自分の口元で息をかけて温めた。
なかなか温まらないから、その手を繋いだままコートのポケットに大事にしまった。
こんなふうに出来るから、寒いのも悪くないな、と思う。
爽子と一緒なら、冬だけじゃない。どんな季節にも幸せや笑顔を見出せた。

・・・また、つらくなったらここへ来よう。
そう誓って、帰途についた。


***

いつもと、少しだけ違う特別な日。
来たときと同じように電車を乗り継いで、俺たちの街に降り立つ。
俺の部屋へ向かうと、そこここに影を落とす薄闇が迎え入れてくれた。
冷えた部屋の中に2人。
・・・もうすこしだけ、一緒に居よう。


文字通り、本当に一日、一緒に居られた。
それはとても幸せで、かけがえのない時間だった。
何かひとつでも欠けてしまうと、成り立たない今の俺の世界。
そのすべてが、かけがえのない、宝物のようだった。

爽子と2人、身を寄せ合って部屋に暖かい空気が満ちるのを待つ。
何も入ってないかのように見えた冷蔵庫から、爽子は食材を取り出し、夕食を作ってくれた。
バレンタインのチョコも、デザートにと出てきた。
今年は爽子特製のフォンダンショコラ。とろとろに熱されたチョコレートが、甘い。


・・・そして、長い夜になるのだけれど・・・
それはまた、別のお話。




Fin




芦屋さま!ありがとうございましたーー!
実は私も彼氏と付き合って今年で7年、22才でして、この作風と一緒だなって
親近感がわきましたWw
仕事がつらくても爽子ちゃんに会いたいだなんて・・・
もう一緒暮らしちゃえよっW
なんて思ってしまいました(^^
そして風早の疲労を癒すのは当然爽子もなんだけど、視界から得るものってやっぱり偉大だなっておもいます。
素敵な雪景色。
いいなぁ。
私は九州在中なのでそんな雪景色見られないんですよね。
芦屋さまの作品ですっごい想像しちゃったんですがねWw
風早を待ってる間確かに爽子ちゃんは妄想してそうだなっておもってしまいました(^^

なんとも君届の二人らしい作品、ありがとうございますーW

はる

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