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日向 夏さま 8.お花(桜/すみれ/スイートピー)

【 カップリング 】:
風早X爽子
龍X千鶴

【 参加希望単語集 】:
8.お花(桜/すみれ/スイートピー)
むしろ





お花見に行こうと言い出したのは誰だったのか。
そんなことはどうでもよいほどにあっと言う間に話はまとまり、風早、爽子、龍、千鶴、あやねの5人は爛漫と咲き誇る桜を見ながら爽子のおいしいお弁当を食べようツアーにでかけることとなった。

少し満開の時期はすぎて、散りかけとはなっていたが桜はまだ十分きれいだった。

散策の後お弁当タイムとなり、爽子が持ってきた昼食をひろげると感嘆の声があがった。
恥ずかしそうに爽子は笑うとみんなの口にあうといいのだけど、と言った。
高校生離れした豪華で緻密な弁当に舌鼓を打った、その後はみなで持ち寄ったデザートを食べる。
のんびりと時間はすぎていったが満腹のおなかが少しあいた頃、風早が爽子に目を向けてにっこりと笑って言った。

「せっかく花見に来たんだし、ちょっと散歩してこよ、黒沼。」

風早のさしだした手に爽子も躊躇なく手をのばした。

「うん!」

爽子はにこにこと答え、立ち上がった。

「じゃあ、ちょっと行ってくるね。」
「みんなも散歩してきたら、ここで集合な。」
二人はそう言うとそのまま手をつないで、歩いていった。

ちょっと沈黙のあとあやねがぼそっと呟いた。
「ナチュラルに二人きりになりやがった。」

千鶴がはっとしたように言った。

「ほ、ほんとだ!風早め風早のくせに…爽やかスケベ王子恐ろしい子…!」
「爽子もナチュラルに手ぇつないでたわね…。あいつら、どこまですすんでんのかしら…。」

後で爽子から聞き出してやんなきゃ…。そう呟くあやねの顔には魔女が乗り移っていた。

親友の恐ろしいたくらみもどこ吹く風で二人はのんびりと歩いていた。
ふっと風早が地面に目をやると散った花びらが絨毯のように広がっていた。

「きれいだね…」

風早の心を読んだかのように爽子がうっとりと呟いた。
そしていつものはにかんだ笑みで風早に

「こういうの、花むしろっていうんだよ。」
と言った。

「花の…敷物ってこと?」
「うん。日本語ってきれいだよね」

ふふっと微笑む爽子を風早は眩しそうに見つめた。

「座ろっか。花のじゅうたん。」

風早の促しに爽子はうなずくとそっと腰を下ろした。
風早もその横にすっと座った。
爽子は風早の愛しそうな視線に頬を染めてうつむいた。
その時爽子の目に小さな野の花が写った。

「お相撲、しよっか。」

爽子のいたずらっぽい笑みが珍しくて今度は風早が赤くなり、それを隠すように急いで言った。

「お相撲?…うーんうで相撲ならハンデあげられるけど」

ふふっと爽子は笑うとハンデはいらないよ、と言って野の花を二本摘んだ。

「スミレ?」

これでお相撲すんの?という風早の問いに爽子は笑いながら二本の花の茎を折り曲げて絡ませ片方のスミレの茎の端を風早に持たせた。

「引っ張って花のとれたほうが負け。花相撲っていうの。」

スタートのかけ声で同時に二人はスミレを引っ張った。
ほどなくして風早のスミレがぷちんときれた。

「あー負けちゃったな。…そうだ、負けたからなんでもいうこといっこだけきくよっ!」そう明るく笑う風早の申し出を当然爽子は断ったのだけど、風早はなおも申し出を続けた。

風早はほんのり困った顔をする爽子をうれしそうにこっそり盗み見た。

爽子の困り顔にさえ嬉しくなってしまう自分に内心苦笑しながら風早は爽子の言葉を待った。

爽子は風早の視線には気づかずしばし悩んだあげく、ふっと思いついたように言った。

「あ、あのお茶が飲みたいので水筒を持ってきてほしい…な。」

その目に含まれるほんのりとしたいたずら気に気づかず風早は爽子がそんなこというのは珍しいなあと思いながら快諾した。

「すぐ戻ってくるから!」


風早が息を切らせて戻ってきたとき
爽子は桜にもたれながら眼を閉じてすうすう寝息をたてていた。
「…寝ちゃったの?黒沼。」

きっと、お弁当づくりがんばったんだろうなー豪華だったもんな。

そう思いながら風早はくすっと笑って自分のジャケットを脱いで爽子にかけた。そして愛しそうに爽子をみつめると頬にやんわりとキスをした。

そのとたん寝ていたはずの爽子の頬が真っ赤に染まった。

爽子が寝たふりをしていたことに気がついて風早も耳まで赤くなった。

「え、ちょ、あれ、黒沼っ」

ぱちっと眼をあけて爽子が真っ赤になりながら言葉を紡いだ。

「ご、ごめんなさい、ちょっとびっくりさせたかっただけなの!」

でも逆にびっくりさせられてしまった…!と真っ赤な顔であわてる爽子に風早はぷふっと吹き出した。

「お茶、のも?」

そう言って風早は一緒に持ってきた紙コップにとぽとぽとお茶を注いだ。

そのお茶の上に桜の花びらがはらりと散って舞い込んだ。

その偶然の贈り物に二人は顔を見合わせてふふっと微笑みあった。

「あのさ、寝込み襲ってごめん。」

風早のその言葉に再びぼんと爽子は赤くなった。
風早はにひっと笑って、続けた。

「だからさ、黒沼も一回俺のほっぺにちゅーしていいよ!」
ほんの意趣返しで言ったはずの言葉だった。しかし爽子は大まじめに風早をみつめた。

「…いいの?」
「え…っ」

爽子のとろけるような視線から風早は眼をそらせなくなった。

風早にそっと爽子は近づいて風早の肩に手をおいた。
服の上からでも熱が伝わってくる気がして風早は息をするのも一瞬忘れた。

「あの…できれば、眼をつぶってくれた方がしやすいのだけど…。」
「えっあっうん!」
反射的に風早はぎゅっと目をつぶった。
爽子の花のような香りが近づいて、風早の心臓の音がマックスになった。

そのとき千鶴の声がした。

「いいけどさ、あんたら、みんなで来たってこと忘れてない?」

風早と爽子は声の主に勢いよく目を向けると真っ赤な顔であわてふためいた。
「あのこれはっそのっ」
真っ赤になった二人に千鶴はにっと笑った。

「あたしと龍もその辺回ってくるわ。でも矢野ちんもそのうち戻ってくるだろうから、いちゃつく

のも適当にきりあげなよ?」

赤い顔を見合わせる風早と爽子を後にして龍と千鶴は歩きだした。

しばらく歩いたところでぼそっと龍がつぶやいた。

「わざと?」
「え。」
「あのタイミングで声かけたの。」

その言葉にきまりわるそうにてへっと千鶴は笑った。

「やっぱ、龍にはばれてたか。」
「しょーた気の毒に…」
「だってさー風早、さっきからずっと爽子独占してんだもん!爽子と友達になったのはあたし等のが先なのに!ちょっとむかつくじゃん!」

あきれたように笑う龍に千鶴はむくれた。

「よかったな。」
「え、何が。」
「千鶴、相当黒…山のこと好きだもんな。あと矢野のことも。」

千鶴はとたんに赤くなった。

「そ、そうだけどよかったなって
どーいういみ?」
「…んーなんとなく。」

正義感が強く、そして嘘のつけない性格の千鶴は嫌われてはなかったが、親友と呼べる友達もいなかった。

親友を彼氏にとられたと拗ねる千鶴の子供のようなやきもちに龍はくすりと微笑んだ。

龍の優しい眼差しから恥ずかしげに目をそらし、千鶴は呟くように言った。

「ーだいたい爽は黒沼だっつーの。矢野ちん覚えたなら爽子も覚えてよ。」
「矢野は二字だけど黒山は四字だから覚えにくい。」
「あはは、何それ。龍らしいなあ」

しばらくなんとはなしに歩いていた二人の眼前に花むしろが広がっていた。

「花むしろって言うんだって。爽が言ってたんだ。」

ほんとに爽は変なこと知ってるよねと言いながら千鶴は龍に座らないかと促した。

二人は桜の木の根本に腰を下ろして見事な桜を眺めた。

「あたしさー徹に【絶対ちーとは疎遠にならない】っていわれた」
「…そうか。」
「あんたは?そう思う?」
「さぁな。俺は占い師じゃないし。」
「徹だってそうじゃん…。」

しばらくの沈黙が二人を包んだ。

千鶴は少し緊張したように同じ問いを繰り返した。

「あんたは?あんたは…ずっとアタシと…」「…千鶴?」

はっとしたように千鶴は明るく言った。

「まあ、あたしおっちゃんのラーメン超好きだしね!超常連だし!疎遠になりようがないか。」

龍はふっと頬をゆるめた。

「そうだな。」
「ね、龍久々に勝負しない?」
「え、…無駄だからやめたほうが。」
「むっやってみなきゃわかんないだろ」

龍はしかたなさそうにため息をついた。

「で、何で勝負するんだ。」

ぷちっと二本のスミレをつんで千鶴はにかっと笑った。

「…えいっ…あっ」
千鶴は健闘したが、ぷちっと音がして千鶴の持ったほうのスミレの花がきれた。
「あーもう悔しいなあ。こんなんでも龍に負けるのか」

本当に悔しそうな千鶴に龍は少しだけ口角をあげ、笑った。

「…まあ、これぐらいは勝たせてもらわないとな。」

なにそれ嫌味?あんたの勝率のがめちゃくちゃ高い気がするんだけど、と憤慨する千鶴に龍はもう一度笑った。


「…こうやってみると龍と千鶴もカップルに見えるんだよねえ」
少し離れたところでみながらあやねは呟いた。

龍が千鶴を、千鶴が龍をどう思ってるのかは正直あやねにもよくわからない。
ただ、爽子が言うように「同じ空気」をもっているなとは思う。
幼なじみとはみんなあんなものなのかとも思うが、他に幼なじみ同士というものを知らないので比べようがないのだ。

しかし、少し羨ましい気もする。

風早と爽子は互いに相手の欠片までもみつめたがっている。

龍と千鶴は息をするように互いを理解している。

爽子のように希求しあう相手も、千鶴のように理解しあえる相手も自分には存在しなかった。

それなりに恋はしてきたはずなんだけどね…
あやねは唇に苦い笑みを浮かべた。

でも最後にはみんな自分をわかってくれない、理解してほしいのだと押しつけるばかりになっていく。

最初は、優しい素振りと余裕を見せていたはずなのに。
「おまえは男をだめにする女だよな」
ふった男にそう言われたことがある。
悔し紛れのその台詞に怒るほど子供ではなかったけれど。

…でもあの時、本気で怒ったり言い返したりしなかったからあたしはやっぱり「男をだめにする女」なのかもしれない。

人に怒りをぶつけたり、真摯に向き合ったりするにはエネルギーがいる。

爽子は大人しいが、どんな相手の、どんな理不尽な思いだって正面から受け止めていた。千鶴は、ユカたちに本音でぶつかっていた。自分の痛みにふれることになっても。

爽子や千鶴はどれだけエネルギーが必要でもそこにたとえ痛みを伴ってもきちんと本当の気持ちで人に接する人間なのだ。

それが本当に優しいってことなんだよね。

ー私みたいに小手先でごまかすんじゃなくてさ。

正直、ユカたちなんてどうでもよかったし、爽子にこれ以上関わらないなら勝手に落ち込んでろざまあみろってさえ思ってた。

でももしここで落としどころ作っとかないと後々やっかいだなって計算したのだ。
だから、泣かせてやったのだ。
それだけのことにすぎない。

あやねはため息を押し殺した。
そのとき突風が桜の花びらをぶわりと舞あげた。

ー花嵐…!

美しい花の乱舞にみほれていたとき
、不意に声が甦った。

『やさしいねぇ。』

あやねははっと息を飲んだ。

やだ、なんでピンなんか思い出すんだろ。

あやねはふいに自分でも知らぬまま微笑んだ。

…突然の風ってとこがあいつっぽいからかも。

「あやねは優しいなあ」

付き合った男にそう囁かれるたびに計算だけどね、と心の中でうそぶいた。
だから俺にももっともっと優しくしてよ。そんな下心が見えてくるその台詞が嫌いだった。

あたしに「優しい」なんて言ってもピンには何のメリットもないのにね。

『はぁ?当たり前だろ。この俺様がおまえごときの優しさなんぞ必要とするか!』

…なんてピンなら言うんだろうな。
かっこよくも優しくもなければ、デリカシーもないナイナイ男だけどさ。

ちょっとだけ見直したよって言ってあげればよかったかな。

あやねはちろりと舞い上がる薄桃色の花びらを見ながら小さく微笑んだ。
(終わり)





うわわわわぁ…
わたしの脳みそでは到底考え付かない様な力作に言葉がでません!
先ず「花むしろ」っていう名前、知らず初めてしりました!
勉強になったなぁ…
そしていきなり相撲を取ろうとするナチュラルピュアカッポゥな2人にビックリしたんだけど。
なーるほど花相撲!
こういうのって昔はしてたんですよね…
やっぱりこの年になるとそんな機会もなく頭の片隅にもそんな考えなかったので、
なんだか懐かしさが湧きあがりました。
懐かしいなぁ…
しかもタヌキ寝入りする爽ちゃん!
うわータヌキ寝入りだなんてなんて可愛いんだろう!
しかもチュウしていいよ発言!
風早こりゃもうナチュラルな大胆さんですね!!!うぉぉぉぉWWW

ちづや龍も同じ事してるんだけどやっぱりなんか違うのよね。
それを遠くからみてるあやねちゃんも、本誌とリンクしててそれがまたイイッ!
なんだろう…ピンの事を掠めてるのがまたいいですねー!
夏さんの作品すっごく好きです!!本当にありがとうございました!!

はる

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