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22.かくれんぼ(爽子狩り) はる

大学に入学する前にする事があった。
それは大学が家から遠いから大学から近い場所であるアパートに一人暮らしをする準備。
幸い場所も決まり、引っ越しの手伝いも龍に手伝ってもらって早く済んだ。
後は…食器等日用雑貨を揃えなきゃいけない。



【かくれんぼ】


「ごめんな黒沼、つき合わせて」
「ううん、全然大丈夫だよ」

休日。
黒沼を誘ってのデート。
食器など日用品を買うってのが口実なんだけど。
自分一人で買いに出掛けても何が必要で何を買えばいいのか分からないから、黒沼の力を借りることにした。
まぁ…いつだって一緒にいたいんだけど。

早速向かったのは雑貨等が豊富に取り揃えられたデパート。
様々な種類、年代や性別にも対応できる豊富な品数が揃えられている。
求めているものだけではなく本当に沢山のものがあるから自然と目移りしてしまう。

「食器って色んな形があるんだな」

目の前には色はそれぞれだが、形も丸だったり四角だったり。
丸でも深さがあったり平べったかったり。
本当に沢山だ。

「そうだね。スープ皿や、カレーにも使えるし…これなんてパスタにもいいかも」
「うわ。料理によって違うのな」

いざ目の前にすると自分一人では購入するのにどれだけの時間が掛かってたんだろって思う。
だって俺なら絶対悩んでたから。

「んー。良かったらさ、黒沼が決めてよ」
「え!?わ、私?!」
「うんそう。俺一人じゃぁ分からないし…それに勝手だけど、良かったら遊びに来るとき黒沼にご飯とか作ってほしいし…駄目、かな」

頼みごとというおねだりを口にし、チラリと彼女をみた。
体をびくりと動かして、何だかもじもじとしている。

「わ、私で…いいのかなっ」
「黒沼がいーのっ。てか、黒沼じゃなきゃイヤだ」
「で、では!風早くんの家にお邪魔したときは毎日作るよっ」
「あはは!別に来る度じゃなくていーよ。黒沼が作ってくれるなら、そんな毎回は強制しないよ」
「ううん。私お料理好きだから…だから、風早くんさえ良ければ、作らせてほしいの」

自分は結構強欲だと思う。
確かに食べれるものなら毎日でも黒沼の手料理を口にしたい。
でも…黒沼だってそうそう余裕なんて無いだろうし、疲れてるときもあるだろうから毎回なんて無理だろうなって考えていた。
けれど返ってきたのは予想にもなかった返事。
やっぱりそう返されたら嬉しくて、顔が綻んだ。

「じゃぁ、黒沼が良ければお願いっ」
「うん!喜んで」

握り拳を作って返事をしたあと、2人で見合いながらにこにこと笑む。
いーな。好きだな…こういう時間。
それから黒沼に食器を見て貰う。
その間手持ちブタさなのもあり、キョロキョロと見渡すと箸やフォーク類のコーナーに目が付いた。
足を運ぶと夫婦箸なんていうお揃いのモノが並ぶ。

夫婦…

なんて言葉。
まだ高校卒業したばっかの俺には実感湧かない言葉だけど、どれだけ大切な言葉かぐらいは分かる。

でも、箸のお揃い…
いいかもしんない。


自然と手が伸びて、箸に箸置き、フォークにスプーンと、全てお揃いで手に取っていた。
そして再び先ほどの売り場に戻る。
黒沼がまだ其処にいる、という固定概念があったからなのに…
「…あれ…黒沼?」

そこには誰もいなくて、当たりを見渡してもそれらしき人物はいない。

「黒沼?」

もう一度名前を口にしてみたけど、返事が帰ってこない。


“ドクン”

胸が鳴り、体を揺らす。

落ち着け俺っ。
黒沼がここにいなかっただけじゃないか。
もしかしたら別の売り場に行ったのかもしれない。
ちょっと探せば見つかるに決まってる。

再び黒沼がいないか見渡す。
けれどやっぱり姿は見当たらない。
周辺を歩く事にしたけれど、黒沼がいない場所が増えてくばかりで、探す場所が広がってく。

「…何処、行ったんだろ」

手にある箸とかの商品がなんだか虚しくて、握りしめた。
ぽっかりと心に空いた空虚感が、寂しいなんて感情を生み出す。
こんなの、男らしくない…
しっかりしろ、俺!

そうだ携帯があるじゃないか、とポケットを探った。
携帯電話を取り出し、直ぐ様黒沼の名前を見つけ、通話ボタンを押した。


“プルルルル…”
“♪~♪~”

―――――え?

受話器から聞こえる音と、外からもする着信音。
あれ?って思った瞬間、
「あわわわ!で、電話がっ」
と慌てふためいた声がした。
鼓動が、早くなる。
音のする方を見ると、お皿やらランチョンマットで両手を塞がれ携帯電話を取り出すことが出来なく慌てる黒沼の姿。

「黒沼…」
「あ、風早くん…」

口から零れた名前に、黒沼は直ぐ気づいてくれた。

2つ程棚を超えた先に、彼女はいた。
呆然としていると直ぐにトタトタとやってきて、手にあるそれを見せてくれる。

「あ、あのねっ、お皿を見てたらそれにあうランチョンマットやコップも欲しくなって。
私がお金出すので、買ってもいいかなぁ…」

無邪気な彼女。
少し照れながら、それでいて口元は笑ってる。
無邪気すぎて…
きっと俺がどんな気持ちだったか知る術すらない、彼女。

「あ…」

両手を塞ぐお皿を、変わりに持つ。
空いた彼女の手。
俺は受け取ったものを片手にもちながら、もう片方の手で黒沼を抱き寄せた。

「か、か…風早、くんっ!?」
驚く黒沼。
けれど暴れたり抜け出したりできないのは、ギリギリの状態でガラス商品を持ってるからだろう。
それをいい事に、俺は抱き寄せたままその手の力を緩めない。
「…なに?」
「あ、えっと…店員さんにも見られるし…は、恥ずかしいのですが…」
「うん…そう。」
「えっ?ええっ?」

俺は頷くだけ。
だからか、黒沼はどうしたらいいかわからず顔を真っ赤にしながらされるがままだった。

「…ごめん。ちょっと…抱きしめたくなって」
「う、ううんっ!」

体を離してみるけど、やっぱり離れがたいのは黒沼が好きだからなのと、其れほどに寂しかったから。
一種の欠乏症みたいで、こんなにも黒沼を欲していたんだと知る。
ただ抱きしめたら、今までカラカラだった喉に潤いがきた様で、余裕を取り戻せた。


俺…こんなにも黒沼が好きだったんだな。


「いいよ、それ。全部買おっか。お金は親から軍資金もらってるから気にしないでよ」
「で、でもっ」
「俺の買い物なんだからいーの。それにつき合わせちゃったんだし」
「そ、そんなつき合わせただなんてっ。風早くんと一緒に居れたから…いいのっ」

―――――うわっ!!!

もうどうしてくれようかこの天然で可愛すぎる俺だけの彼女!!!

幸せそうに笑う、偽りのない表情。
俺を夢中にさせてならない一つ一つの言動。
クラクラして頭が酔いしれそうだ。


「もうっ…黒沼、可愛すぎ…」
「え、えぇ!?かかか可愛いだなんて!わ、私がっ!?」
「なーに?俺が嘘つくとでも言うの?」
「け、決してそう言う意味ではっ!!で、でも私なんかが烏滸がましいといいますかっ」
「あーもうっ。そんな可愛いすぎるからさっきみたいに抱きしめたくなっちゃうんでしょっ」
「え?えぇえっ??!!!」



ほんっとーに、鈍い。
でもそこが可愛いから、ついつい苛めたくなってしまう。
慌てふためく彼女をみながら、今日の収穫である品物が入った袋の重みを確かめる。
これ以上黒沼を歩かせるわけにもいかなくって、買い物は以上にするかな、って思った俺に
追い討ちをかける様に耳打ちされたのは

「あ、あのね…さっきは人前で抱きしめられて恥ずかしかったのだけれど、い、家でなら…い、いいよっ」


もう我慢できなくって!!!!




このあと直ぐにソファーベットも購入した。








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ワンちゃんな風早。
さみしかったらやっぱり爽子欠乏症でさみしくなっちゃうのかな、と思って。

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